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セーレvs紅!? 《後編》






その後、俺達は何事も無かったかのように魔王城へと帰還した。


セーレがまだ目覚めておらず、心配だがじきに目覚めるとのこと。



自室に戻った後、セーレをベッドに寝かした俺は近くのソファに腰掛け、すでに向かいのソファで寛いでいた紅と相対した。



なんと驚くことに、俺が戻った時にはこの爆破されまくった部屋の様子は元の綺麗な状態に修復されていた。

恐らく紅が神様パワーを使って直したんだろうが俺は敢えて触れない。





「……それにしても、あんだけどんちゃん騒ぎしといて誰も気が付かないとはな……もしや、お前の仕業か」



「御名答っ♪」



イラッ。



「わたしが事前に結界をはっといたのー。だから誰も気が付かないんですぅー」



イラッ。

なんなんだそのですぅーそうなんですぅー口調はッ!!


そんなのが許されるのは十代中盤までだ!!



「まっ、そんなことはさておき」



仕切り直しやがった。自分でふざけたくせに。





「それにしても、この部屋広いね~。こんな立派なソファが二つも置けて……社長さんの部屋みたいっ」



紅が改めて感心した様子で部屋を見渡す。



「まあ……魔王なんて社長みたいなもんだろ。知らんけども」



実際この部屋はすごく広い。天蓋付きキングサイズベッド、対を成す二つの高級ソファ、食事用のテーブルと椅子。


これだけの家具を置いてもまだまだスペースがあるのだから驚きだ。


これだけでも魔王になった甲斐があるってもんだ。




「ふーん。さすが魔族の王。神族の王よりリッチかもね?」



「んな馬鹿な」



と、俺が一笑すると、対抗するようにふふん、と小馬鹿にしたように笑う。



「あーあ。いいなあー。まっ、わたしも良い部屋貰っちゃうんだけどね」



「あっそ。好きにしろ。俺の邪魔をしないんならな。でもここの階はダメだから」



「えっ、なんで?」



なんでって……。


ただでさえこのような危なかっしい女を城に住まわせるだけでもストレスMAXなのに、その上毎日顔を合わせるような状況になったら……俺は……俺は……ッッ。




「お前の部屋は地下な。最下層で寝てフゴッ!!」



「いいのかな~? 今の君は魂の状態じゃなくて生身なんだよー?」



頭を掴み、女とは思えない怪力のアイアンクローをかましながら喋る外道。


メリメリメリメリ。



「すいません離してください。す、すいませんっ!! もうしません!!しませんったら!!」



プライド?


そんなもんとうの昔に捨てたわ。






「あれ……。ま、魔王様……私は一体……」



目をこしこしと掻きながらセーレが上半身を起こし始めた。



「おう、セーレ目が覚めたか」



「はい。私は一体どうして…………っ!!」



突然、ハッとして口元に手を当てるセーレ。恐る恐るといった様子で部屋を見渡す。


そして自身の居るベッドを見る。



「も、申し訳ありませんっ!!」



顔を真っ赤にさせ、ベッドから跳ね起きて部屋の隅にまで移動してしまった。


そんな気にすることないのにな。



そんな様子を紅はイヤらしい笑顔で見つめていた。



「セーレちゃんかーわいいっ!」



「シャトラ……? どうして貴女がここに?」



さすが神族。

あれほど紅のことを疑っていたセーレがもうシャトラ・ラネーゼと認識しきってしまっている。






「遊びに来てたの。クロスケくんたくさんゲーム持ってるよね~。番組もいっぱい録画してあるみたいだし」



紅は手元のリモコンを操作して、薄型テレビを弄っていた。ファンタジー世界なのに電化製品があるなんてな。俺も最初はビビった。



「魔王様のご趣味は多彩ですからね。げえむにあにめ、読書や人形の製作等、積極的に活動しておられますね。最近はげえむをなされる事が多いです」



全部インドアな趣味だな。

さすが引きこもり魔王と言われるだけのことはある。



しっかしこのテレビ、うちのと似てるなあ……って。ん?




・・・AQUOZ?


AQUOZって書いてあるぞ?


日本でもよくあるブランド名じゃないか?



これってどういう意味なんだ……?



俺が割りとこの事実に戦慄していると、紅は意味有りげな笑みを浮かべ、



「セーレちゃん、ちょっと席を外してくれない? 重要な話なんだ」



「……? 分かりました」



セーレは特に疑いもせずに、部屋から出ていった。 



それにしても、先ほどあれだけセーレに殺気を放出していたのにも関わらず、今では見る影もない。


一体どういう風の吹き回しなんだろうな。


大鎌の柄を俺が折ってしまってから状況が様変わりしてしまったように思える。





「少し気付くのが遅い気もするけど、丁度良いから教えといてあげる」



ちょっとそれは反論できん。

このテレビで彩香とよくゲームやってたし。たまにセーレとも対戦してたし。


でもそんな細かい事、毎日刺激的なことが起こり過ぎて気づく余裕なんてなかったのだよ。




「ここになんで日本の製品があるかってことだよね? その理由は単純。――この世界、“エルドラド”と“地球”が兄弟のようなものだからなんだ」



このファンタジー世界に名前なんてあったのか。エルドラド、ねえ。

それにしても、兄弟とはなんだ。



「兄弟……?」



「造りが比較的似通っているの。だからお互いの世界は強く干渉し合っていて、この世界に日本の文化の名残があるのはそのせい、なんだけど……」



なるほど。だから彩香やリンのような日本っぽい衣装の奴らもいるわけか。

もしかしたら、探せば欧米や中国風な文化にも出会えるかもしれないな。


俺が得心していると、紅がチラッとAQUOZの薄型テレビを見やる。



「でも、いくら干渉し合っているとはいってもコレは日本の製品そのもの。これはあくまで例外だね」



「クロルがなんか関係してんのか?」



「お、クロスケくん。鋭いねえ」



パチパチと拍手をする紅。



「そう、彼はエルドラドと地球を繋ぐ穴を所有していた」



穴……だと……? ごくり。






「彼はその穴を使って自由に地球へ出入りしていたみたいだね。それで地球から色んな物を拝借してたみたい。わたしですら気付いたのがつい最近。もう驚いちゃうよねー」



よねーじゃねえよっ。


そんな穴が仮にあるとしたら・・・



「クロル、この世界に来るんじゃね?」



「あは、かもねー」



この、アマ……ッ。



「でもそれならもうここにクロルくんが現れてもおかしくないよね? それが起きないってことは何らかの理由で穴が使用できないのかもしれないよ?」



「ああ。まあ、確かに」



「両方とも時間軸はほぼ同じだし、二人が入れ替わったその日にでも穴を使って戻ってくると思うよ」




というより、紅なら地球の様子を覗けるんでなかろうか?



「あ、それ無理。今他の神族がすんごい監視の目を向けてるから好き勝手できないのよねー」



それお前が勝手なことしたからじゃね?






「だから、今後穴が使えるようになれば、クロルくんから何らかのコンタクトがあるかもしれないから気を付けてねー?」



「メンドクセ」



「じゃあわたしは自分の部屋を決めに行きまーす。なるべく君には干渉しないつもりだから安心してね? でも人間をちゃーんとぶっ殺してるかはたびたびチェックしてるから……忘れずにね?」




前半の優しげな台詞と後半の圧倒的プレッシャーの台詞の落差が半端ないのですが……。



俺に恐怖を植えつけて満足したのか、満ち足りた笑みを浮かべ、部屋から出ていった。



そういえば当初の目的は人類全ての抹殺だったな。


まだ一人も殺してないけど、そろそろ紅がキレるということか……?



う、うむ。

人類に攻撃を仕掛ける機会を作らねば。


そうだ、城内会議とやらでそのことを議題に上げてもらおう。


よし、セーレに相談しよ。



俺はセーレを呼んでくるべく、部屋を飛び出し走り出した。




魔族と人間。

今、再び戦いの火蓋が切って落とされるのか……。



俺はそんな渦中にはいたくないぞ。


くそったれ!





廊下を走りながら、セーレがいるであろう事務室、使用人部屋、私室辺りを虱潰しに探そうかと考える。



途中、様々な奴とすれ違うが、多くの者は目を逸らしたり、逆にじろじろと不躾に見てきたり侮蔑の混じった視線を向けてくる者もいた。


そろそろ慣れてはきたものの、やはり気持ちの良いものではないな。


これではクロルの引きこもり度合いも加速せざるを得なかっただろう。



過去にクロルと他の魔族との間で、大きな何かがあったのだろうか。




「……ぬっ!?」



物思いに耽りすぎたのか、向こうから歩いてきた奴と衝突してしまった。



「……気を付けろ」



魔王に対して何という口のきき方。

よほど魔王に対して恨みがあるのだろうと恐る恐るその者の顔を見てみたが、割りと澄んだ瞳だった。



侮蔑の入った視線でもなく、俺に対して負の感情が感じられなかった。


ぶつかったこと自体に関してはムカついていたようだが。



この城の中では珍しい黒の髪に黒の瞳。そしてイケメン。

一瞬俺と同じ人間かと思うくらいに人間と酷似していた。


特にイケメンな所が俺にそっくり。






でもあいつ……魔族っぽくなかったな。


外見が人間と酷似している魔族なら俺もそこそこ見てきたが、今通り過ぎたあいつからは魔族の気配が微塵も感じられなかった。


どちらかというとアーシアやその弟のような…………。


まあそんなはずはないだろう。

魔王の住む城に人間などいるはずがない。


俺も魔力探知の方を本格的に習得した方がいいかもしれん。


人間と魔族の区別くらいできておかないと外で歩いている時とか危なそうだし。




そう考えを纏め、俺は再びセーレを探すべく、走り出した。



だけど俺の頭の中ではしばらくモヤモヤしたものが残って取れなかった。



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