199 元居た世界への帰還 1
八雲端末エピソードの前にこんな能力を授かっていたとはびっくりです。
2026/08/03 魔獣戦線はストレート過ぎたので、やんわり変更。つうかイメージは慎一くんの胸から飛び出す巨大な前足なので、つい。
「オトサン、オトサン、マッツグ進ンデ」
師匠は頭にまとわりつくキミコのクマに促されて、広場の中央へ歩み出した。
「まっつぐって、お前はなんで江戸弁なんだよ?」
「イイカライイカラ」
広場の中央には大きな丸太が立っていた。歩んでいる時には目の前には何もなかったはずだ。いかんな、柔軟に受け入れよう。この丸太はなんでか知らんが、必要に駆られてその場に出現したのだよ、きっと。
「オトサンオトサン、コノ丸太カッツァバイテ」
「かっつぁばいてって、なに?」
「爪で切り裂くみたいな意味よ。新潟弁で」
近くの切り株に座っていた鈴鹿連が説明してくれた。
「かっつぁばく=切り裂く、ねえ。しかも爪で」
「ソーヨー、オトサンニハ大キナ爪アルカラネー」
「いやあ、俺には無いぞ爪なんて、しかも大きな爪なんて」
「強ク念ジルンダ、アノ日ノアノ場所ヲ」
「それはさあ、あの深町君の出てくる映画の台詞だろう? キミコのクマって言いづらいなあ? 名前は無かったのかよ、お前さんには」
「名前アッタヨー。当テテミルヨロシネ」
「うーん、名前なあ。なんて呼んでたかなア?」
「オトサン、知ッテルハズヨー」
師匠は頭からキミコのクマを下ろして、両脇に手を入れてじっと見つめた。所々飛び散ったキミコの血糊が赤黒くこびり付いている。
「オトサン、キミコニキイテルヨ」
「む……つ、ムツだよな?」
キミコのクマは師匠の手の中で大きく手足をばたつかせて狂喜乱舞した。
「オトサン、正解! チャント憶エテルジャナーイ」
キミコは何故か日本海軍の戦艦にご執心だったのを思い出した。中でも陸奥が大好きで、確かそこからクマの名前もムツにしたのだった。
「ムツハ知ッテルヨ、オトサンハ今、大キナ爪ヲ持ッテイルノヨ
サア、カッツァバイテミテ!」
そう言うと、キミコのクマ改めムツは器用に師匠の頭によじ登った。
「爪……ねえ」
師匠は大きな爪と言われて、両腕の3本の爪で、飼い主を流血させるピンクのクマを思い起こした。
すると大きな風圧が自分の胸元から巻き起こった。気がつくと師匠の胸から巨大なクマのヌイグルミの腕が出現したのだ。その先端で鈍く光っているのは三本の大きな爪だった。
「ちょっ!」
出現した巨大なヌイグルミの腕が丸太を一閃する。ばきりと丸太は砕け散った。
師匠は慌てたが、鈴鹿連はその姿を見てほくそ笑んだ。
「ライオンじゃなくてクマなのね」
師匠の胸からはクマのヌイグルミの右腕と頭部が現出していた。クマのヌイグルミは師匠の顔を覗き込む。
「オトサンオトサン、コレカラヨロシクネ」
「お前は美沙子のクマ? っていうとお前もムツなの?」
「ソダヨー。私モムツデソノコモムツ。私ハオ姉チャンダヨ」
ずんた ずんた ずんたった ずんた。
華怜を連れたチーキー楽団はなんだかどこかで聴いたような聴いたことがいないような、懐かしい感じの行進曲を奏でながらずんずん進んで、広場に差し掛かっていた。
ガス人間鑑賞終了。結局何だかよくわかんないままのガス人間でヤンした。この後また「寄生獣」やるんだよな。




