196 クマヨクマヨ何故踊ル?三郎ノ心ガワカッテ オソロシイノカ?
恐ろしく暑いせいで、体調がおかしいですよ。体の熱がひきませぬ。
2026/07/22 なんか変な方向に傾倒しすぎたな。解りにくいので解りやすく修正。
2026/07/23 通し番号間違えてたので修正
「アノコノ名前ハ美沙子ダヨ」
キミコのクマの一言は、じめじめとした汚泥に脚を突っ込んだような不快感となって佛淵三郎の脳髄に染み込んでいった。
叫び声など出ない。ただ、胃の奥がせり上がり、喉の粘膜がからからに乾いていく感覚がある。毒島伽緒子の手を強く握り込んだまま、三郎は深く、重い息を吐き出した。
気持ちが悪い。
吐き気がする。
だが、その悍ましさの出処を、彼の冷徹な脳髄はあまりにも正確に、冷酷なパズルのように嵌めていった。
美沙子。
三郎の本当の世界で、自分の傲慢な芝居がきっかけで殺人鬼・二葉義人を呼び寄せたことで、自分の意図から外れて、ヤツの思惑通り完璧に「加工」されてしまった本物の娘の名前だ。その惨劇の記憶に耐えかねていた時に、偶然渡った元居た世界に似ているが違う世界。
そこで三郎が手に入れ、そしてまたしても失うことになった妻子の、娘の名前こそがキミコだったのだ。彼は、二度目の世界で殺された「キミコ」という記号を都合のいい蓋にして、最初の世界で自分が犯した「美沙子」に対する致命的な罪悪感を覆い隠していた。
2度目の世界でも娘の復讐を行おうと藻掻き続けた。それはキミコを失った悲劇の父親を演じ、復讐を完遂することで、最初の世界で美沙子の命をチップにした自分の本性から、必死に目を背けようとしていたのだろう。今、三郎が立っている3度目の世界にもヌイグルミ惑星にも、もう妻も娘も、誰も居はしない。残されているのは、ただ狂気の記憶の残滓を血糊と共に綿ぽこに沁みこませたキミコのクマだけだった。キミコのクマの姉的存在・美沙子のクマは三郎自身の身体の一部へと変容している。
「……なるほど。そういうことか」
三郎の薄い唇が、自嘲の形に歪んだ。三郎は伽緒子の手を静かに離し、自分の額にじっとりと滲む嫌な汗を手の甲で拭った。取り乱すことも、激昂することもない。ただ、自分の底知れない気持ち悪さを淡々と、シニカルに受け入れていた。3度の世界渡航で得た、直感で解ってしまう
「オレは、岡田食品のあの男を追いつめることに躍起になっていたつもりだった。自分が間接的であれ美沙子を殺したという事実から逃げるために、次の世界の『キミコ』という名前を都合よく貪っていただけだった。実に……胸がむかつくほどに、身勝手な忘却だ」
「美沙子がキミコに変わっていたのか。そりゃあ、別の世界だ、自分の世界じゃないって、嫌でも気づくよねえ。一番最初の世界で起こったことはなかったことにしたかったのね。」
その様子を後ろで眺めていた鈴鹿連が、冷え切った狭間の空気の中で、心底居心地悪そうに身を固くした。
「いいよ、キミコのクマよ。
名前を忘れていたことも、自分の気持ち悪さを誤魔化すために記号をすり替えていたことも、すべて私の傲慢だ」
三郎は膝の上でくるくる踊るテディベアを冷ややかに見つめる。
「自分がこのおぞましい因縁の引き金だと分かった。今の世界で俺は独り身だ。俺が出会っていないだけで、瑠璃子や美沙子やキミコはいるのだろうな。それについては逃げも隠れもしないよ。ちゃんと始末をつけよう」
孤独な狭間の闇の中で、なおもシニカルに居直ってみせた佛淵三郎の思考の歯車が、静かに、そして狂おしく回転を始めた。
「とはいえ、俺の事よりも、まずはあっちとこっちの華怜の件だよね」
思考を切り替えることで、いつもの軽い調子に戻った師匠の姿に、毒島伽緒子はどう対応していいのやら、フリーズするしかなかった。
『ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。 ~魔導書の力で祖国を叩き潰します~』を観たのですが、そんなに賢かったら婚約破棄される前に、いろいろ画策できたでしょうにと思ってしまい、もうお話が頭に入らない入らない。作画そこそこいいのも腹立つなあ。




