195 佛淵三郎のクマ
佛淵三郎落ちるとこまで落ちていただくことで、八雲端末事件での師匠になるのでしょうね。
「オトサン、嘘ツキ」
キミコのクマの声には、子供特有の甲高さを削ぎ落としたような、ひどく平板な冷たさがあった。
「キミコタチノコト、本当ハタダノ餌ニシカ思ッテナカッタノヨネ」
佛淵三郎の脳内で、これまで強固に組み上げられていた自責と被害のドラマが、音も立てずに瓦解していく。都合よく書き換え、美化していた記憶の底から、ぬるりとした本性が這い出てくる。
そうだ。私はあの夜、家族を守るために狂気を演じていたのではない。ただ退屈だったのだ。警察組織という大文字の歯車の中で、磨耗していく日常に耐えられなかった。だから、背後に潜む「観察者」との息詰まるゲームを、自ら望んで進めていた。あらかじめ用意された舞台装置として、妻と娘の命を天秤に乗せたのは、他ならぬ自分自身だった。
「オトサン、大嫌イ。キミコヲ変態ニ差シ出シタクセニ」
キミコのクマのビーズの目が、ガラス玉の目の光を反射して冷たく三郎を見下ろしている。
「……デモネ、オトサン、大嫌イト同ジクライ大好キナノヨネ」
そこに劇的な感情の昂ぶりはない。あるのは、父親という男の身勝手な本質を見限った諦念と、それでもなお、その血の繋がりに執着する歪んだ愛憎だけだった。狂気すらもが淡々と、事務的に三郎を追い詰めていく。
「……私が、やったんだ」
三郎はぽつりと言葉を落とした。喉を掻きむしるような劇的な悲鳴は出ない。ただ、胸の奥がからからに乾き、冷たい砂が流れ込んでくるような感覚だけがある。綺麗に塞いでいたはずの「蓋」は、もう戻らない。自分が正義の刑事でも、悲劇の父親でもなく、ただの傲慢な殺人加担者であったという事実が、重く、容赦なくのしかかる。
「結果的に俺が、あの怪物を家に呼んだ。俺が、二人を殺したんだ。すまないなんて言葉じゃ、足りないな……」
三郎の口から漏れる後悔は、もはや誰の耳にも届かない。
「オトサン、カワイイイイコネ。ホントノ名前忘レタノモ許してアゲル。アノコハキミコナンテ名ジャナイヨ。イツ書キ換エラレタノ? オトサン」
「え?」
「アノコノ名前ハ美沙子ダヨ」
ガス人間5話まで鑑賞。韓国的なノリなのかなあ、日本の作品には無い変な勢いで押し通す感じが面白いですなあ。




