189 宵闇貴彦はクマクマ楽団の奇跡を見た!
えーと宵闇クン視点で少しだけ状況を捕捉の前編。
アサルトライフルの連射音が響き、警察署に向かえとごねていた警官が吹き飛んだ。咄嗟にあっちの華怜をかばって、交番の中へ移動した。視界の隅でおっさんが被弾して倒れるのが一瞬映り込んだ。
「っ!」
すぐに宵闇は交番入口へ取って返す。エスカレーターに面した、小さいガラス窓が、銃弾を受けて破砕する。SIG SAUER P230JPを構えて、迎撃する。しかし、シングルマガジンなので段数が9発と心許ない。拳銃が規制されている日本じゃ、こんな銃撃戦は想定してないからな。
おっさんをかばうように陣取り、応戦する。なんとかエスカレータを降りてきたSIG MCXは沈黙させたが、予備マガジンはあと一個。というかなんで俺が予備のマガジンを持っているかは、あー、秘密だ。
「これ、ひゅー、これ『高瀬舟』、ひゅう……だな」
「何言ってるかわかんないよー」
毒島伽緒子がおっさんを引っ張って、障害物の裏に引き込もうとしている。
「森鴎外のひゅう『高瀬舟』。自殺し損ねた弟がひゆう……まさに今の俺。ひゆう」
「もうもうもうもうっ! 師匠は黙っててよー、あ、だめだよー 黙ったら死んでもわかんないからっ」
少しだけおっさんの身体は動いて、あとは脚さえ引っ込めば敵の銃撃からは身を隠せる。
と思いきや、おっさんは脚を撃ち抜かれた。運が悪いな。
「いたたっ!」
「もうもうもうっ、師匠なにやってるんだよーっ 香港アクション映画あるあるだよー」
おっさんと毒島伽緒子のやり取りが、緊迫した状態なのに、あまりに間抜けすぎてついつい、俺は笑いそうになった。いや、顔は確実ににやけていたと思う。ふと避難がましい視線を感じて、そちらに視線を動かすと、無窮丸がじとっと俺の顔を見ていた。
「いま笑ってた」
「いや……笑う寸前だった」
北千住駅前のペデストリアンデッキを支える巨大な柱が林立しており、黒スーツ達はこれを遮蔽物にして、銃撃してくる。果敢に応戦するのだが、実弾9発&予備男装の底が尽くのは早かった。
無窮丸文子は全弾撃ち尽くしスライドストップ状態のSIGをプラプラさせる。だよなあ。敵の攻撃は間断なく続く。これは詰んだかもしらんなあ。
「この洩れる息はさながら『息をいたす度に、創口でひゆう/\と云ふ音がいたすだけでございます。』状態だなあ、とか思ってるでしょ?」
オッサンの方から聞き覚えの無い声が聞こえる。視線をそちらへ送ると、オッサンにまたがる謎の少女の姿があった。おっさんが頷くと少女は振り向いてにっこり笑った。
「ほうら、私の方が正解だったでしょ? 頼子ちゃん」
「『高瀬舟』なんて中学校の国語以来だっての」
俺は自分の隣から聞こえた声にビックリした。もう一人女の子が居る。俺と目が合った女の子はぺこりと頭を下げた。
入口の方から激しい銃撃の音が聞こえる。しかし、着弾はしていない。そちらを見ると入口を敵から守るように、巨大なクマのヌイグルミが立っていた。その足許ではちっさいクマのヌイグルミがが、手に手に楽器を持って演奏をしている。
「なんだこの状況はっ!」
俺は大声を上げるしかなかった。
ユエン・ウーピンがメガホンをとった『ブレード・オブ・ザ・ガーディアンズ』はなんか漫画が原作らしい。知らなかったんだけど、アニメ化されて、現在第2シーズンがスタートしてるらしい。予告編見る限りは面白そう。




