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ヒルコの娘は常世と幽世の狭間で輪舞を踊る  作者: 加藤岡拇指
師匠と私 ミラクル☆ガールズ
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188 そのコ

末端肥大症のように話が広がっていくなあ。

こう、もっとこじんまりとしていたはずなのに。

そのコはこげ茶色のテディベアだ。手足は大きなボタンで胴体にくっついている。鼻を起点に裁断された布を縫い合わせた、オーソドックスな顔立ちのテディベアである。ところどころこげ茶色が濃くなっている部分がある。それはそのコを抱えていた、女の子が首を掻き切られて亡くなった時に浴びた血糊の跡だ。もうだいぶ前に血糊は乾いていて、その部分だけゴワゴワした肌触りになっている。


そのコの名前は……。


ずんた ずんた ずんたった ずんた。

なんだかどこかで聴いたような聴いたことがいないような、懐かしい感じの行進曲が流れてくる。

胸の上で何かが飛び跳ねるのを感じて、師匠は目が覚めた。焦点の合わない眼で胸の上で飛び跳ねるナニカを視認した。

40センチほどのこげ茶色のナニカが胸の上で踊っていた。それがテディベアであると認識するまで、しばらくかかった。師匠が身じろぎするのを感じたのか、こげ茶色のテディベアは飛び跳ねるのをやめて、師匠の顔を覗き込んだ。

胸の上のクマはガラス玉の目の光。

深淵(テディベア)をのぞく時、深淵(テディベア)もまたこちらをのぞいているのだ」

師匠は自分はベッドに寝かされており、その横に丸椅子に座った少女がつぶやくのを聞いた。

自分を覗き込むこげ茶色のテディベアがすっと手を伸ばし、師匠の頬をたしたしと軽く叩いた。そのままクマは少女の方にかをを向けた。

「生キルゥ?」

クマの質問に少女は軽くうなづいた。その途端、こげ茶色のテディベアは体を起こし、胸の上でなんだかどこかで聴いたような聴いたことがいないような、懐かしい感じの行進曲に合わせて飛び跳ねた。

「えーと、肺に穴が開いてたのと、左肩が砕けていたのと、脚の銃創。解れていたから縫い直したのよ」

「解れ?」

「ああ、私は鈴鹿連、しがないテディベア作家をしてる。で、ここは忘れられたヌイグルミ達が集まるヌイグルミ惑星」

「ヌイグルミ惑星?」

「クマの腕が取れてたり、ヘタってしまって解れちゃってはみ出した綿とか、まあ直すことはできるわけ。その要領で人間も出来るかなと思って、直してみたら……出来ちゃった」

「ああ、解れか。俺の身体の解れをテディベアよろしく縫い直したと。」

「そうそう。ただね、直すのには材料が必要だった」

「ソウソウ、オ姉チャンヲ使ッタノヨ」

「お姉ちゃん?」

「ウン、違ウセカイノ私」

「違う……世界」


「そのコには双子の姉が居たのよ。最初に姉が現れて、後から妹がやって来た。ご主人は一緒なだけど、やって来た世界が違う。腹違いならぬ世界違いの姉妹ってとこね。ここはあらゆる世界の忘れられたヌイグルミが最後に辿り着く場所なのよ」

そこへ取手頼子が現れて、そのコの言葉を捕捉する。

「そのコの姉はもう抜け殻でね、自分で動くこともできなかった。姉のたっての希望でね、貴方の解れを直す材料になった」

「なぜ?」

「わかるだろ、師匠こと佛淵三郎」

本名で呼ばれたのはいつぶりであろうか。名前で呼ばれたことがきっかけとなったのか、自分が佛淵三郎であると再認識したからか、忘れていた記憶と知らない記憶がどっと流れ込んできて、その奔流が脳髄内を駆け巡る。

『BACKROOMS』も早く観たいが、私は基本的にA24作品とは相性が悪い。

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