187 解れたとて大丈夫らしい
大筋の流れは把握していていて枠からは外れていないので良しとします。
「あああああああっシナチク!シナチク!シナチク!あなたはシナチクなのね!どうして何も言わずにいなくなっちゃったの? ずっとずっとずっとずっと探したの。どこへ行ってたの?」
醤油で炒め煮にした若竹の如き色をしたテディベアのシナチクに向かって、毒島伽緒子が歓喜の声を投げかける。シナチクは再会に歓喜するご主人様のテンションに少し気おされているようだ。
「何処かで貴方は大人にならなくちゃと思ったでしょ。多分、お父さんとお母さんが亡くなった時に。自分は子供じゃ居られないと感じたでしょ」
鈴鹿連の言葉に、毒島伽緒子は小さく頷いた。
「お人形遊びは子供のすることだって、真っ先に思い描いてしまったんでしょうね」
ああ、そうか。大人にならなくちゃと思ったのか、狭い世界の中で大人になるためには、好きだったものを我慢しなくちゃいけないと思ったのか。
「思わされたのもあるのでしょうね。あなたの叔父さんに」
ああ、あいつのせいか。両親の他にシナチクまでわたしから取り上げたのか。
「カオコ、カオコ
無事? イタクナイ?」
シナチクが毒島伽緒子を見上げながら声をかける。
「このコ、あなたが危険な目に遭ってるってね教えてくれたのよ」
取手頼子がぶっきらぼうに話し出した。チーキーズ達に交番のトレースを指示している。
「あっちのペコ郎はふみちゃんが危ないってね、連れてけ連れてけってうるさいったらありゃしない」
ペコ郎はというと無窮丸文子の頭の上にへばりついてそのまま動かない。文子の頭にずっと頬ずりをしている。されている文子はいまひとつ状況が呑み込めないのか、茫然としているようだった。
そんな騒がしい中、リノリウムの床の上で師匠は右肩と右わき腹からどくどくと血を流している。
そんな師匠を覗き込む、もう一匹のテディベアがいた。
そのテディベアが鈴鹿連の服の裾を引っ張った。
鈴鹿連がそのコに向き直る。
「死ンジャウノ?」
テディベアの言葉を受けて、鈴鹿連は師匠を見やる。
「そうねえ、だいぶ解れちゃってるけど……大丈夫、かな」
連の言葉に、そのコはその場で小躍りし始めた。
ずんた ずんた ずんたった ずんた。
なんだかどこかで聴いたような聴いたことがいないような、懐かしい感じの行進曲が流れてくる。
リズムに合わせて、そのコは踊り続ける。
「Never After Dark」も観たい。




