184 ペコ郎とシナチク
いやはやなんでここでクマ? 想定外過ぎる。
鈴鹿連は一匹のクマのヌイグルミと見つめ合っていた。ヌイグルミ惑星では古参に分類されるクマだった。つい最近、連が解れていた右腕を直してあげたクマだった。そのクマが連の上着の袖を掴んで、じっと見上げて来てたのだった。
「えーと、名前は? って喋れないんだっけ?」
「……」
「あらまあ、頼子ちゃんは……今留守かあ」
クマは微動だにせず、袖を掴んだまま、連を見つめ続ける。
「なにか伝えたいことが……ある?」
クマはこくりと頷き、再び元の姿勢に戻り微動だにしない。
「あー、楽団員!」
ずんた ずんた ずんたった ずんた。
鈴鹿連はなんだかどこかで聴いたような聴いたことがいないような、懐かしい感じの行進曲を演奏しているクマの楽団の楽団員を呼ばわった。ずんたずんたと楽団員が近づいてくる。
「クマ?」
「大至急、頼子ちゃんを呼んできて。このコが何か御用があるみたい」
「くまっ」
楽団員は敬礼を返すと、ずんたずんたと頼子ちゃんを探しに行くのだった。
無窮丸文子と毒島伽緒子にのされた黒スーツはいち早く、警察署へと運ばれていった。こっちの華怜を加えた3人娘は交番で待機となった。簡単な事情聴取もこみである。とはいえ、公安7課の刑事がいるので、刑事事件にするしないなどの判断は、無窮丸文子次第ではあった。
「後で警察署に移動になるけどいい?」
毒島伽緒子はVサインで応える。
無窮丸文子は若いというだけで毒島伽緒子を敬遠していたようだが、今はかなり打ち解けた模様。今も毒島伽緒子が携帯に付けているクマのマスコットについて話をしている。
「テディベアは昔から好きだったの。でも、一番大事にしていたクマのヌイグルミは、お葬式のバタバタの最中に居なくなっちゃった」
あれは死んじゃったお父さんとお母さんには悪いが、両親の死よりもとても悲しかったと毒島伽緒子は遠い目で話し始めた。
「あれはクマーーシナチクって名前だったのーーが自分でどこかへ行ったとしか思えないんだよね」
毒島伽緒子の部屋には誰も入っていなかった。だけどクマのシナチクだけが居なくなっていた。窓がヌイグルミが通れるくらい開いていた。
「だから勝手にシナチクが居なくなったと思ってた」
長年愛された人形に魂が宿るということか。
「もう子供じゃないから、ヌイグルミは卒業しろっておじさんが言いだして、私もそうかなあと思ったりしてね。そんな雰囲気を察して、シナチクは出ていったんじゃないかな」
毒島伽緒子はさびしそうにしている。もう要らないと幼い心は思っても、後から考えると「なんで捨てちゃったんだろう」「あんなに仲良しだったのに」などと後悔してしまうものだ。
かく言う自分も……
「あたしもクマ持ってたな」
無窮丸文子がつぶやく。
「どんなコだった?」
「ペコ郎って名前だった。テディベアでもなんでもない、普通のクマのヌイグルミ。母親だったか、父親だったかが気まぐれでパチンコの景品でもらってきたんだった」
「ペコ郎って、ふみちゃんがつけたの?」
無窮丸文子は恥ずかしそうにうなずいた。
クマの楽団員が戻ってくるまでの間、無言で見上げるクマのヌイグルミとなんとか意思疎通をとろうと
鈴鹿連は努力するのだが、そのコはずっと微動だにしなかった。そんな努力の中、今度は左袖を引っ張るクマに気がついた。
「え? 今度は何? キミもお話があるの?」
左袖を引っ張ったクマのヌイグルミも、こくりと頷くと連を見上げて固まった。
「頼子ちゃーん、早く戻ってきてー」
ずんた ずんた ずんたった ずんた。
なんだかどこかで聴いたような聴いたことがいないような、懐かしい感じの行進曲が流れてくる。
3年ぶりの足立の花火でテンションが上がる。そのままのテンションで嵐のラストツアーの配信を鑑賞。もうね、ムービングステージの進化系とか、気球の演出とかとてもとてもすんばらしい。ためにためて放たれる「Monster」「Truth」のつるべ打ち!たまらんかったわー。ということで、いろいろと手につかず。




