176 師匠と華怜と宵闇と 1
いろいろモザイク的なことをしてしまったため、いろんな物語が錯綜して、自分でもよくわからなくなってしまい。読み返してしまった。
堂島華怜のアパートの前。
昔の建築物のため、エレベーターがない。仕方ないので階段を上っていく。その途中で師匠の携帯が鳴った。
『魅了の魔女が見つかったんだって?』
今回の依頼主加茂からの電話だった。
「ああ。今から確認に行く。最初に謝っておくよ」
『どうしたんだい?』
「多分、あんたの許へ連れていくのは難しいと思う」
『いつもの勘ってやつかね』
「まあ、そうだな。同じ案件で7課も動いているし、どうにも本人があんたのところへ行く気はないと思うんだよ。いろいろ含めて、ちょいと難しいかな。うん、そんなところだ」
『あんたが言うのならば、そういうことなのだろうな。まあ、ダメもとで勧誘してみてくれ』
「わかった。いつも期待に添えなくてすまんね。今から魅了の魔女とご対面だ。
一旦切る」
加茂は物好きな金持ちである。アメリカンコミックス好きが行き過ぎて、自分でジャスティスリーグというか、アベンジャーズというか、ヒーローチームを作りたくなってしまった男だ。最初のうちはアメコミオタクの強烈な妄想に過ぎなかったのだが、並行世界の話を知ってからおかしなことになった男である。
「最初はアベンジャーズやジャスティスリーグを目指したんだ。しかし、どうにも蓋を開けたらB.P.R.D. (超常現象調査防衛局)なんで驚いた」
とは加茂氏の発言。まあ、その話はまた今度詳しく語るとしようか。
師匠は加茂との出会いを回想しかけたのを、中断して今直面している物事に向き合うこととした。
宵闇が3階で立ち止まった。各階に3部屋ある。その奥の部屋のドア前で立ち止まった。
「ここ。ここが堂島華怜、あー、こっちの華怜の部屋」
宵闇の言葉に師匠は小さく頷いた。
「おっさん、準備はいいか」
師匠は再び小さく頷く。宵闇が呼び鈴のボタンを押す。昨今ならばシリコンゴムなのだろうが、古い建物ではおなじみの、ボタンを覆う黒いゴムパッキンの重たい感触が指に跳ね返ってくる。
サムターンを回す金属音の後、ドアが開く。チェーン錠が掛かった数十センチの隙間から、あっちの華怜の瞳が覗いた。あっちの華怜の瞳が師匠と宵闇の顔を交互に移動する。宵闇が口を開きかけたが、それよりも早く師匠が言葉を紡いだ。
「この後人を探しに行くつもりのようだが、ちょっと難しいと思うぞ」
師匠の直感スキルが、あっちの華怜が何をするつもりでいたのかを看破していたらしい。
「え? あんたは誰?」
華怜は引きつった笑いを顔に張り付けたま固まった。
ひさびさのミミズにょろにょろ系ホラー映画『Wormtown』予告編鑑賞。うーむ、昨今はボディホラーってジャンルもあるのね。




