第5話
もう、ほかの星が話しかけてもユキノは返事をしなかった。
かつて優しく地上を眺めていたその瞳まで白くなり、ほとんどもう見えていないようだった。
実はほかの星々は、交代で彼女を支えてきた。
日の光を少しでも遮るよう、彼女の周りに集まり影を作った。
星々はみな、ユキノのことが大好きだった。
星となり、不安な気持ちを励ましてくれたのは、いつも彼女だったから。
心配する星たちの輪に、そっと神の使いも加わった。
ユキノの強張った体をそっとさする。
神の使いの手は、何故か不思議な温かさを持っていた。
ありがとう、と皆に感謝をして。
それでも、見つからなかった。
ごめんなさい、と声にならない声が言う。
でも、もういいです。
私にはあんなに愛した人が確かにいた。
思い出せなくてごめんなさい。
見つけられなくてごめんなさい。
そして、こんなに駄目な私を、こんなに心配してくれる星たちと出会えた。
それはきっと、すごく幸せなことだ。
ありがとう。
さようなら。
最後の光が消えようとする中、
どこかで声が聞こえた気がした。
-いつか、また会えたら、その時は-
記憶の中の彼が、初めて振り返った。
その瞬間、彼のすべての記憶が、ユキノの全身を駆け抜けていった。
「カズ・・・サ?」
聞き間違いじゃない。
赤ん坊の泣き声がする。
必死で体をそちらに向ける。
地上の一点がまばゆく光っていた。
太陽の光さえ、街の明かりさえ遠く及ばない輝き。
ユキノの頬を、透明な涙が一筋伝い落ちた。
神の使いが一瞬、驚きをみせ、そして笑った。
「やっと見つけたんだね。カズサか・・・星騒がせな男だ。うんと文句を言って、そして今度こそ幸せになりなさい」
その手でそっと、ユキノの星を送り出す。
彼女自身には、もう彼の元に行く力すら残っていなかったから。
この夜、地上の誰にも気づかれずに、か細く、しかし確かな光を放つ星が一つ、降った。




