第3話
異変は微かに始まった。
目覚めると、体が微かに重い気がする。
「おはよう、お姉さん」
周りの星たちに、彼女はそう呼ばれていた。
自分の名前位は憶えている星がほとんどの中で、彼女には何も手掛かりがなかったから。
「うん、おはよう」
出した声は少しいつもより掠れていた。
でもそれは周りにはまだ気づかれないくらいの小さな違和感。
さして気に留めず、今宵も夜通し地上の人々を眺める。
自分が探している人は、どんな人なのだろう。
今日こそは見つかるだろうか、でもどんな風に?
ぼんやりと見つめているうちに、いつの間にか彼女は眠ってしまったらしかった。
夢の中で、彼女は誰かの背中を追っていた。
(行かないで)
でも、その背中が決して立ち止まることのないことを、彼女は知っている。
(待って。私も連れて行って)
私も、そう言ってふと振り返ると、彼女の後ろには大勢の人たちがいた。
怪我をした人や病気の人、それを支える人々が、彼女の名前を呼んでいる。
(私たちをお助けください、ユキノ様!!)
はっと気づくと、ほかの星々が彼女をのぞき込んでいた-とても心配そうに。
「お姉さん、光が・・・」
おずおずと、一つの星が話しかける。
言われて自分の体を見渡すと、自分の体が、星の光が斑になっていた。
こんなことは今まで一度も無かった。
言葉もなくうろたえていると、星たちの奥から神のお使いが姿を現した。
星が生まれる時以外、ほとんど姿を見せることのないはずなのに。
「ごめんね。君を助ける方法がないか、ずっと調べていた。神様にも聞いてみたけど、見つけられなかった。このままだと、君はもうじき消えてしまうんだ」
相手を見つけられぬまま、これほど長い歳月がたった星がないのだという。
彼女は、星としての寿命そのものが尽きようとしていた。
そして、星になっても相手を見つけられなかった彼女には、もう命あるものとして生まれ変わることもできない。
存在自体が消えてしまうのだという。
「でも・・・でも私、名前を思い出しました。ユキノ、それが私の名前」
神の使いは小さく微笑んだようだった。
それは哀れみなのか、悲しみなのか、それとももっと別の。
「君が星としていられるのは、長くてもあと一月だと思う。・・・でも、諦めてはいけないよ、ユキノ」




