第九十九話 ダンジョン
黒砂の魔窟へ向かう道中、アル、キャリー、リバの三人は街道を歩いていた。
目的地まではまだ少し距離がある、そんな中、キャリーがふと思い出したように口を開いた。
「そういえばさ」
「今回のダンジョンについて何か知ってることとかないの?」
リバは少し考える、だが、すぐに首を横に振った。
「さあ?」
「ただ……」
どこか嫌そうな顔をする。
「誰も引き受けてないってだけで危険な感じしかしないけど……」
「確かにな」
俺は頷く。
「ダンジョンは基本的に魔物の住処になっている場所が大多数だ」
キャリーとリバは耳を傾ける。
「自然生成されたものもあれば、魔物自身が住みやすい環境へ作り変えたものもある」
「そして強力な魔物が住み着く場所ほど危険になる」
俺は前を見据えたまま続けた。
「その代わり、冒険者や探索者が残した宝物が眠っていることも多い」
「今回も恐らく強力な魔物がいるはずだ」
「気を引き締めよう」
するとキャリーが苦笑する。
「そうだね!」
「でも、あの試験ほどの魔物じゃないといいなぁ……」
その言葉を聞いた瞬間、リバが不思議そうな顔をした。
「?」
「何言ってるんだ?」
俺とキャリーが同時に振り向く。
「試験より強い魔物がいるに決まってるだろ?」
リバは当然のように言った。
「なんてったって、一発でシルバーになれる依頼だぞ?」
沈黙、俺とキャリーの表情が固まる。
「……」
「……」
二人とも露骨に嫌そうな顔になった、リバだけが首を傾げている。
「え?」
「何その顔」
俺は空を見上げた。
「頑張ろう……皆」
キャリーも遠い目をする。
「うん……頑張ろう……」
そんな二人を見て、リバはますます意味が分からなくなっていた。
◆
それからしばらくして――
三人は目的地へ到着した。
黒砂の魔窟、巨大な砂漠の中央にある入口が口を開けている。
その中には不気味な静けさが漂っていた。
「ここか」
俺が呟くとキャリーも洞窟を見る。
「見るからに危なそうだね……」
「帰りたい……」
リバは早速弱音を吐いた、しかし誰も相手にしない、三人はそのまま洞窟の中へ足を踏み入れた。
ひんやりとした空気、奥へ進むにつれ光は薄れ、洞窟の暗さが増していく。
そして、アルは前を見て立ち止まった。
「……黒い砂?」
眼前に地面一面に広がる黒色の砂、まるで炭を砕いて敷き詰めたようだった、俺はしゃがみながら考えた。
(……砂漠に生息する魔物は多い)
(だが……)
黒い砂を見つめる。
(何でこの砂は黒いんだ……?)
答えはない、ただ不気味な違和感だけが残る。
その時だった。
『グルルルル……』
遠くから低い唸り声が響く、それを聞いた三人の動きが止まる。
そして――
「うわぁっ!?」
真っ先に反応したのはリバだった。
「ヤバそうな魔物の声だ!!」
青ざめた顔でアルとキャリーの後ろへ隠れる。
「アル!キャリー!」
「戦闘は任せた!!」
「サポートは任せろ!!」
キャリーは呆れたように振り返る。
「……情けない」
「なんとでも言え!」
二人が言い合いを始める、俺は小さくため息を吐いた。
「行こう、皆」
真っ直ぐ暗闇を見据える。
「気を付けて」
その言葉を合図に、三人は唸り声のする方へ歩き出した。
黒砂の魔窟、その奥で待ち受けるものを、まだ誰も知らなかった。




