第百話 熱
黒砂の魔窟の中、俺達は眼前に広がる黒い砂の前まで来ていた。
俺はが立ち止まり魔視を発動する。
「……魔力反応がある」
その言葉にキャリーとリバも身構えた。
「この先に魔物がいる」
リバは少し驚いた顔をする。
「魔視使えるんだ!?」
「凄いな!」
そして期待したように続けた。
「それで、どのくらいの強さなんだ?」
俺は魔力を探る、だが、その表情は少し険しかった。
「それが……」
「この先の黒い砂の下から複数の反応がある」
「恐らく砂の中に潜んでいるんだろう」
キャリーが辺りを見回した。
「隠れてるってこと?」
「……多分」
「恐らく砂喰らいだ」
リバの顔が引きつる。
「うわ、よりによってかよ……」
俺は続ける。
「この先を通る獲物が砂の上を歩いた瞬間に襲うつもりなんだろう」
「完全な待ち伏せだ」
キャリーは前を見る。
「それなら先手を打った方が良さそうね」
「ああ」
アルも同意した。
「広範囲高威力の魔法が理想だが……」
そしてリバを見る。
「リバ、お前はどうだ?」
リバは気まずそうに目を逸らした。
「いや……」
「俺には得意魔法が無いって言ったろ?」
「普通の魔法なら使えるけど、高威力なのは無理だ」
俺は少し考える、そしてすぐに作戦を立てた。
「分かった」
「キャリー、できるだけ広範囲の水魔法を」
「リバはそれに雷魔法を重ねて威力を上げてくれ」
二人は頷く。
「了解!」
「わ、分かった!」
次の瞬間キャリーが手を前に出した。
「水魔法――」
大量の水が出現する。
「洪水水流!」
激流が黒砂の上を駆け抜けた、続いてリバが両手を突き出す。
「雷魔法!」
青白い電撃が水面へ走る。
「雷撃!」
バチバチバチッ!!
水を伝い、広範囲へ電流が流れた、その瞬間だった。
ズボォッ!!
砂の中から巨大な口が飛び出す、さらにもう一体、そしてもう一体。
「出た!」
キャリーが叫ぶ、サンドイーター達は苦しそうに身をよじっている。
「アル!」
「ああ!」
俺は身体強化を発動し、地面を蹴る。
凄まじい速度で砂の上を駆け抜けサンドイーターを横一文字に斬る、一体目が真っ二つになる。
さらに加速。
二体目、三体目、鮮やかな連撃。
「三体目!」
俺は叫ぶ。
「残り二体――」
その時だった。
ズルッ、足元が滑る。
「――っ!?」
俺の身体が大きく傾く、転倒、砂の上へ転ぶ。
「……?」
刹那、俺を違和感が襲った、何かがおかしい、足の感覚がない。
いや、感覚が――
(熱い!)
「っ!!」
思わず顔を歪ませる、俺は即座に魔力を練る。
「転移魔法!」
魔法陣を出し、光が弾ける、次の瞬間にはキャリー達の隣へ戻っていた。
リバが目を丸くする。
「?」
「おい、どうしたんだよ?」
俺は痛みに耐えながら両足を魔視で見る。
「っ……!」
靴の下、特に足底部の火傷が酷かった、爛れて靴と皮膚がくっついている、無理に脱げば皮膚が剥がれるだろう。
俺は二人に歯を食いしばりながら説明する。
「やられた……」
苦しそうに言葉を吐く。
「この砂……」
「ただの砂じゃない」
リバは黒砂を見る。
「え?」
俺は座りながら続ける。
「熱を帯びてるんだ」
その言葉に二人は息を呑む。
「だからキャリーの水魔法で冷やされた場所では平気だった」
「でも冷やされていない場所は違う」
俺は拳を握る。
「くそっ……!」
視線の先、残った二体のサンドイーターが再び砂の中へ潜ろうとしていた。
「あいつらはただのサンドイーターじゃない」
「熱に強く適応した亜種だ」
黒砂の魔窟、その名の意味を俺達はようやく理解し始めていた。




