第百一話 火傷
俺はキャリーの回復魔法を受けながら足を見下ろした。
「軽度の火傷は治せたけど、足は……多分まともに使い物にはならないと思う」
俺の両足は依然として強い痛みを発していた。
リバはそんな俺を心配そうに見ながら言う。
「アル……大丈夫か? 大丈夫だよな? きっとここにいる魔物はサンドイーターだけじゃない、他の魔物も居るはずだ、今襲われたらヤバいぞ……」
キャリーもそれに続ける。
「うん、撤退したほうが良いと思う」
「まだ入口からそんな進んでないし、アル、行ける?」
俺は頷く。
「ああ、なんとか……ごめん、俺のせいで」
リバは首を横に振る。
「何言ってんだよ、少なくともお前のせいでは無いだろ」
リバは俺の肩を支えながら言った。
「さ、帰ろう」
キャリーも反対側からアルを支える。
俺は痛みに耐えながら歩きだし、俺達は来た道を戻り始めた。
その時だった。
ズボッ――
足元の地面が突然消えた、俺達はリバの絶叫を聞きながら落下した。
「なっ――」
「うわあああああ!!」
三人の身体は暗闇の中へと落ちていった。
◆
しばらくしてリバは目を覚ました。
「てて……」
砂の上に倒れていたリバはゆっくりと起き上がる。
「……!」
慌てて周囲を見回した。
「おい!? アル! キャリー! 何処にいるんだ!? 居たら返事してくれ!」
しかし返事は無い、静寂だけが辺りを包む。
「マジかよ……最悪だ! 俺の人生こんなところで終わるなんて……」
すると後ろから呆れた声が聞こえた。
「……うっさい」
「!?」
「あんたホントに男なの?」
「キャリー!」
リバは勢いよく振り返った。
「良かった! 無事だったんだ!」
「なんとかね」
「……一応聞くけど魔視使えたりする? アルが見つからないの」
リバは首を横に振る。
「魔視なんて使えるわけないだろ……あんな高等技術」
「よね」
「取り敢えずアルを探そう、かと言って俺もキャリーも魔視使えないし、どうすれば……」
その時だった。
――ズボッ。
「……え?」
何かが砂の中から現れ、リバの足を掴んだ。
「ああああああ!! サンドイーター!? 助けて! キャリー!!」
「うるさ――」
すると砂の中から人影が現れる。
「うるさい、リバ……」
「……」
「……」
「な、なんだ、ただのアルか……良かった……」
「ただの……は余計だ」
そんな俺を見てキャリーは胸をなで下ろした。
「無事で良かったわ」
「今度こそ帰りましょ」
周囲を見回しながらキャリーはため息を吐く。
「これじゃダンジョン内の魔物の討伐はおろか、大まかな地図すら描けそうにないわ」
「もうこの際ダンジョン攻略はいいだろ……生きて帰ることが最優先だ」
それを聞いた俺はは首を横に振った。
「いや、攻略は続けよう」
「え?」
「どっちにしろこの先帰ろうとしても魔物の討伐をしながらダンジョン内を探索することになる、それならダンジョン攻略も続けたほうがいい」
「ホントに大丈夫かよ……」
リバはアルの足を見る。
「三人の内一人は重症、一人は役立たずなんだぞ!?」
「役立たずは言い過ぎだ」
「いや事実だろ……」
「リバ、お前も充分凄い奴だ」
「……そうか?」
「取り敢えず私が大まかな地図を描きながら探索する」
キャリーは紙とペンを取り出した。
「アルは魔視で周辺の探知」
「ああ」
「リバはアルのサポート!」
「頼もしいぜ、頼んだぞキャリー、今はお前が頼りなんだから」
「あんたがもうちょっと強ければ苦労せずに済むんだけどね」
「ひどくない!?」
そんな軽口を交わしながらも、三人の表情には緊張が残っていた、落とし穴の先、そこが本当に黒砂の魔窟最深部なのか。
そして、この先に何が待ち受けているのか、それは誰にも分からない。
こうして俺達は、ダンジョン「黒砂の魔窟」の攻略を再開した。




