第百二話 主
ダンジョン「黒砂の魔窟」の攻略を再開した俺達。
周囲を警戒しながら進む中、キャリーが現在分かっている情報を整理する。
「取り敢えず情報を整理すると、このダンジョンの一番の脅威は黒い砂!」
「あの砂は高温で、とても普通に歩けたもんじゃない、水魔法で冷やすことも出来るけど限度がある」
俺は頷く。
「長時間の維持は難しいだろうな」
キャリーは続ける。
「そして、その環境に適応した魔物が居る」
リバは手を頭に当てた。
「一発でシルバーになれるわけだ……!危険ダンジョンすぎるだろ……!」
俺はキャリーを見る。
「キャリー、マップは任せた」
「了解!」
俺は周囲に魔視を巡らせる。
「近くに魔物の気配は無い、進もう」
三人は慎重に通路を進んでいった。
◆
しばらくして俺の魔視が魔力を捉えた。
「二人とも、止まってくれ」
「魔物の気配だ」
「何体だ?」
「二体だ、強くはない」
キャリーはリバを見て言う。
「リバ、雷魔法の用意!」
「あ、ああ!」
二人は即座に魔法の準備を整える、キャリーが水魔法を放ち、魔物の動きを止める。
その直後。
「喰らえっ!」
リバが放った雷撃が水魔法を伝い魔物を一網打尽にした。
轟音と共に二体の魔物が倒れる。
リバは確信したように言う。
「やっぱりこの技強いな」
「そうね」
「雑魚魔物くらいならこれで一発だ」
「ああ、でも油断は禁物だ」
「分かってるよ」
そう言いながらも、どこか嬉しそうだった。
◆
ダンジョン攻略を再開してから四時間ほどが経過した、キャリーは地図を閉じる。
「大まかな地図は完成したわ」
リバは目を輝かせる。
「お、本当か?」
「残りは黒い砂の所だけ、それに帰るにはあのサンドイーターがいる地帯を抜けなきゃいけない」
「あとあそこだな、一番広い黒い砂の地帯のとこ」
「うん」
俺はは地図を見つめながら言う。
「帰るには、この高温の砂をどうにかしなきゃいけない」
「原因があるって言ってたわね」
「うん、俺の読みが当たってれば、それを解決する原因はそこにある」
「……まさか、行くのか!?」
リバの顔が青ざめる。
「確かあそこは一番ヤバい気配があったとこだろ!?」
「でも、行くしかない」
「覚悟を決めましょ」
リバは露骨に嫌そうな顔をした。
「わ、分かったよ……」
少し俯きながら続ける。
「それに一番辛いのはアルだもんな……」
俺はは何も言わず、小さく頷いた。
「……行こう」
◆
そして一行は、その場所の手前まで到着した。
広大な空間、一面に広がる黒い砂、周囲の空気は今までとは比較にならないほど熱い。
「……あいつだ」
「え?」
「あの魔物が原因だ」
リバが視線を向ける、そして固まった。
「あ、あれって……」
巨大な影が黒い砂の中央で眠っている。
翼、鋭い爪、長い尾。
その姿は間違いなく――
「ドラゴンじゃないか!?」
リバは思わず声を上げる。
「勝てるワケ無いって!」
しかしキャリーは冷静だった。
「……よく見て」
「?」
「身体が小さい、恐らく幼体よ」
「そしてあのドラゴンが黒い砂を作ってる」
「でしょ?アル」
俺は頷き、魔視で観察を続ける。
「黒竜」
「外敵から身を守るため縄張りを自身の熱で守る習性のある魔物だ」
「だからこんな広い範囲が黒い砂になってるのね」
俺は頷く。
「それにあのサンドイーターと共生関係にあるんだろう」
リバは首を傾げる。
「共生関係?」
「これは仮説だけど……」
「ドラゴンはサンドイーターに熱で過ごしやすい環境を与えてその代わりにサンドイーターが食べ残した屍肉や冒険者の残した宝物を貰ってるんだろう」
「ドラゴンの後ろを見てくれ」
俺はドラゴンの後ろにある宝物の山を指差す。
「このダンジョンの入口に近いサンドイーターよりも多くの宝物を奴が持っている」
「あれが証拠だ」
ドラゴンは眠っているだけなのに圧倒的な存在感があった。
俺は考えを言う。
「取り敢えずあそこから引き離そう」
リバは疑問を口にする。
「どうやって?」
「遠距離攻撃で引きつけるんだ」
「はあ!?」
リバは思わず声を荒げた。
「近接じゃ食われて終わりだ!」
キャリーはリバを宥める
「リバ、落ち着いて」
「落ち着いてられるか! ああいうのは遠距離で一撃で仕留めるのが安全だ!」
「このメンバーにそんな事出来る奴はいるか?」
「うっ……」
沈黙が流れる、やがてリバが口を開く。
「……アル」
「何だ?」
「ならせめて奴の急所を魔視で見てくれないか?」
「何か考えがあるの?」
リバは小さく笑う。
「一応持ってきたコイツが活躍しそうだ」
そう言って背負っていたバッグを開く、中から取り出されたのは金属製の武器。
「銃か?」
「ああ、それも魔器だ」
「これは俺がダンジョンで見つけた代物だ」
手慣れた様子で銃を構える。
「だが欠点としてリロードが遅い」
「なるほど」
「でも敵が一体ならそれも気にならない」
俺は再びドラゴンへ視線を向け、魔視を集中させる、そして剣を握り直した。
「よし」
「ドラゴン討伐だ」




