第百三話 vs黒竜(幼体)
俺は魔視を集中させ、眠るドラゴンを観察していた。
しばらくして、その目が開く。
「見つけた」
「本当か!?」
「ああ」
俺はドラゴンの首元を指差す。
「奴の急所は喉元だ」
「ブレスを主軸に狩りをする魔物だ、恐らく魔臓がそこにあるんだろう」
「喉元!?」
リバの顔が引きつる。
「それじゃ狙えないじゃないか!?」
俺は少し考え、言った。
「……一つだけ方法がある」
キャリーは首を傾げている。
「本当に?」
「ああ」
「だが極めて成功率が低い策だ」
「一体どのくらい低いんだ?」
「……十中八九失敗するだろう」
それをリバは驚く。
「はあ!?やめよう!もっと安全な方法を探そう!」
キャリーは呆れた顔で言う。
「じゃあリバ、他にいい方法あるの?」
「……うっ」
俺は続ける。
「基本的には失敗する前提で動く」
俺は二人を見回す、そして静かに作戦を伝えた。
◆
数分後、三人はそれぞれの配置につく。
俺は二人を見る。
「よし、二人とも、準備はいいか?」
「いつでも!」
「お、おう!」
「始めるぞ」
「まずは俺だな……」
リバはバッグから魔銃を取り出した。
深呼吸を一つ、銃口をドラゴンへ向ける。
「頼むぞ……アル!」
魔力を込め、そして引き金を引いた。
バンッ!!
魔弾が一直線に飛ぶ。
キャリーが叫ぶ
「今!」
「転移魔法!」
俺は飛来する弾丸へ魔法を発動する、転移先はドラゴンの口内。
だが――
「……っ!」
早すぎる銃弾に転移魔法は不発に終わった。
「失敗か……!」
弾丸はそのままドラゴンの顔面へ命中する。
次の瞬間、ドラゴンの目が開いた。
グオオオオオオオオオオオッ!!
轟く咆哮に黒砂が吹き飛ぶ。
リバは思わず後ずさる。
「ひっ! ドラゴンが来る!」
「リバ! 作戦通りにして!」
「あ、ああ!」
ドラゴンは怒り狂ったまま突進してくる、俺は魔視を使い続け、そして叫んだ。
「ドラゴンの口内に高魔力反応……今だ!」
ドラゴンが大きく口を開き灼熱の光が口内に集まる。
ブレスだ。
「岩石壁!」
リバの魔法で地面が隆起する、巨大な岩の壁がドラゴンの前に出現した。
「キャリー!」
「水塗装!」
続いてキャリーの魔法で岩壁の表面を大量の水が覆う。
直後。
ゴオオオオオオオオオオッ!!
灼熱のブレスが放たれた、水が蒸発し、大量の蒸気が発生する、しかしブレスの勢いは大きく削がれた。
「よし!」
そしてブレスが止んだ。
「二人とも後ろに下がれ!」
「頼んだよ!アル!」
「死ぬなよ!」
二人は全力で距離を取る、ドラゴンは怒りのまま岩壁を粉砕した、轟音と共に破片が飛び散る。
そして俺へ向かって突進する、俺は剣を構えた。
「ドラゴンの幼体……」
ドラゴンが口を開く。
「未成長の口内でブレスは連続で吐けないだろ」
予想通りだった、ドラゴンはブレスではなく、牙で噛み砕こうとする。
「かかったな」
身体強化を全開にし、俺はその場から一歩も動かない。
眼前に巨大な口が迫る。
「はあああああっ!!」
俺はドラゴンの急所へ一突き、剣がドラゴンの口内へ突き込まれる。
ドスッ――!
確かな手応え、剣先は喉奥へ到達した、ドラゴンが苦悶の咆哮を上げる。
グアアアアアアアアッ!!
しかしドラゴンはなおもアルを飲み込もうとする。
キャリーが叫ぶ。
「アル!」
「危ない!」
だが俺は冷静だった。
「転移魔法!」
瞬間、俺の姿が消える、次の瞬間にはキャリーとリバの隣へ移動していた。
ドラゴンは何も飲み込めないままよろめく。
一歩、また一歩。
そして――
ズドォォォン!!
巨体が地面へ倒れ込んだ、黒砂が舞い上がる。
しばらく誰も動かなかった。
やがてリバが口を開いた。
「……終わったのか?」
「……ああ」
キャリーが安堵の息を吐く。
「勝った……」
ドラゴンは動かない、完全に沈黙していた。
数秒後。
「勝ったああああああ!!」
予想外の騒音にキャリーは耳を手で押さえた。
「ちょっと!うるさい!」
その様子を見て俺は小さく笑う、黒砂の魔窟最大の脅威。
ドラゴンの討伐、それは三人の勝利で幕を閉じたのだった。




