第百四話 宝
三人はドラゴンの討伐を完了した。
巨大な亡骸を前に、しばらく誰も言葉を発さなかった。
やがて俺が口を開く。
「これで黒砂を作る原因は無い」
キャリーが聞く。
「本当に?」
「ああ、三日か四日ほどすれば普通の砂の温度になるだろう」
「まさかドラゴンに勝つなんて……!」
リバは未だに信じられないといった表情を浮かべている。
「ドラゴンだぜ!? 幾つものパーティを壊滅させてきた最強格の魔物だぜ!」
キャリーは補足する。
「幼体、だけどね」
「それでもドラゴンはドラゴンだろ!」
「ああ」
俺は静かに頷いた。
「俺達の勝利だ」
「だよな!」
リバは満面の笑みを浮かべる。
「もう残りの魔物はサンドイーターだけだし、ほとんどダンジョン攻略したようなもんだろ!」
「疲れたわ」
キャリーはその場に座り込んだ。
「取り敢えず休みましょ」
「賛成だ」
「俺ももう動きたくない……」
こうして三人は最深部で休息を取ることにした。
◆
それから四日、三人は交代で見張りをしながら休息を続けていた、ドラゴンがいなくなった影響なのか、周囲の温度も徐々に下がっていく。
キャリーは砂を手に取り確認した。
「うん」
「どうだ?」
「砂の温度が下がってる、これなら大丈夫よ」
「見ろ!」
突然、リバが大声を上げる。
「お宝だ!」
ドラゴンの寝床の奥、そこには大量の宝箱や金貨、装飾品が積み上げられていた。
リバは子供のような勢いで駆け寄る。
「すげぇ! 本当に宝の山だ!」
「まったく……」
呆れながらキャリーはアルへ目を向けた。
「アル、大丈夫?」
「相変わらず痛いけど……」
アルは足を動かしてみる。
「回復魔法のお陰でマシにはなってきたよ」
「無理はしないでよ」
その時だった。
「おい! アル! これを見ろ!」
リバが興奮した様子で駆け戻ってくる、手には小さな容器が握られていた、キャリーはそれを見た瞬間に目を見開く。
「……それって、回復魔法濃縮抽出液!?」
リバは苦笑いを浮かべる。
「……長い名前だな」
「回復魔法を液体化した貴重品よ! 普通は滅多に手に入らないわ!」
「てことは、つまり!」
リバは容器の蓋を開ける、そして中身を俺の足へとかけた、淡い光が足を包む。
「……!」
「どうだ?」
俺はゆっくりと立ち上がった、そして数歩歩く。
「おお!」
「どうだ?」
「足が動く! 痛くもない!」
「凄い効果ね……」
「やったな!」
「ああ!本当に助かった!」
キャリーは再び宝の山を確認する。
「他にも色々あるけど、魔器みたいな物はないみたいね」
「他のはお金にすればいいさ」
「俺が運ぶよ」
「お、早速頼もしいな、助かるぜ」
こうして準備を整えた三人は、残っていたサンドイーター達の討伐へ向かった。
◆
数分後、最後のサンドイーターが倒れる、キャリーは完成した地図を掲げた。
「マップも完成!」
「おお!」
「魔物も討伐完了!」
「これで――」
三人は顔を見合わせる、そして同時に叫んだ。
「ダンジョン攻略完了!」
達成感に満ちた空気が辺りを包む。
「これで俺達もシルバーになれるな」
アルはリバへ向き直った。
「改めてリバ、ありがとな」
「え?」
「お前がいなきゃ、きっと俺達は死んでたかもしれない」
キャリーも頷く。
「本当に助かったわ」
リバはしばらく呆然としていた、やがて顔を真っ赤にする。
「……アル、キャリー!」
「?」
「そうだろ!? 俺のおかげだろ!?」
「調子乗りすぎ」
「なんだよ!」
「でも」
「助かったのは事実だし、ありがとね」
リバは頭を掻きながら言う。
「べ、別に礼なんていいんだけどよ……」
リバがおずおずと口を開いた。
「……な、なぁ」
「どうした?」
「一つ提案なんだけど……」
「?」
リバはあからさまに視線を逸らした。
「こ、これからもお前らの手伝いをしてやってもいいぞ!」
「……」
「……」
数秒後、二人は同時に吹き出した。
「な、何で笑うんだよ!?」
キャリーは笑いながら答える。
「あんた、素直に仲間になりたいって言えばいいじゃない」
「うっ……」
「リバ、本当に俺達の仲間になってくれるのか?」
「あ、当たり前だろ!」
リバは勢いよく答えた、俺は手を差し出す。
「よろしく!」
キャリーも笑顔で頷く。
「よろしくね」
リバは手をしっかり握った。
こうして――
新たな仲間リバが加わったのだった。




