第百五話 アステラ
無事ダンジョン「黒砂の魔窟」を攻略した俺達は魔兵団本部へ報告しに来ていた。
「依頼達成お疲れさまです」
エントリは笑顔で書類をまとめる。
「報酬としてお二人をシルバーとして登録しておきますね」
俺は少し目標に近づけた事を喜ぶ。
「よし、これでシルバーだな!」
キャリーはお宝を見て言う。
「それにお金にはしばらく困らなそうね」
ドラゴンの財宝も合わせれば、当面は生活に余裕がある。
リバは俺達に尋ねる。
「それでこの後はどうするんだ?」
俺は少し考えて答えた。
「とりあえず強いパーティに入りたいな」
「そうね、ゴールドに上がるにはそれが一番手っ取り早いらしいからね」
「そりゃそうなんだけど、強いパーティは強い仲間しか入れてくれないぞ」
リバは腕を組む。
「入団試験も厳しくなるしな」
「それでも挑戦する価値はあるだろ?」
「何事もやってみなきゃ!」
その時だった、入口が開く。
ガチャッ。
複数人の冒険者達が入ってきた、一目見ただけで分かった、全員が歴戦の強者だと。
周囲の冒険者達がざわつき始める。
「おい見ろよ、アステラのやつらだ」
「やっぱすげぇなぁ」
「今回はサイクロプスの群れの討伐だったんだろ?」
「俺達じゃ手の届かない存在だ」
キャリーは首を傾げた。
「あの人達ってそんな凄いの?」
「知らないのか?」
リバは驚いた顔をする。
「あいつらはアステラだぞ」
「パーティの中でも十本の指に入るくらいには強いやつらだ」
「アステラ……」
その名を聞き、俺は目を細めた。
「何か知ってるの?」
「うん」
俺は静かに答える。
「確か……俺の両親がいたパーティだ」
「えっ!?」
「そうなのか!?」
二人は同時に驚いた。
「じゃあ何か知ってるんじゃない?」
「ああ、恐らく」
俺は立ち上がり、そして真っ直ぐアステラの元へ向かった。
◆
「すみません、ちょっといいですか?」
アステラの団員の一人が振り返る。
「?」
「誰だこのガキ?」
別の団員が肩をすくめる。
「さあ?」
「入団希望者じゃない?」
俺は堂々と立っていた、すると中央にいた男が、アルの顔をじっと見つめる。
周囲より一回り大きな体格、鋭い目付き、明らかにリーダー格だった。
茶髪で黒い瞳を持つ男はしばらく無言だったが、やがて口を開いた。
「お前……もしかして……」
「?」
「いや、その顔……」
男は確信したように笑う。
「なるほど」
「お前、名前は?」
「アルです」
その瞬間、男の表情が変わった。
「間違いない」
アステラの団員達が首を傾げる。
「何がです?」
「知り合いですか?」
男は笑いながら答えた。
「こいつは師匠の子供だ」
団員達が驚愕する。
「なっ……!?」
「マジかよ!?」
「へぇ……」
興味深そうな視線が俺へ集まった、リーダーは腕を組む。
「おいアル」
「はい」
「お前は一人か?」
俺は首を横に振る。
「いや、仲間が二人います」
「そうか」
次の瞬間、リーダーはギルド中に響くほどの声で叫んだ。
「おい!」
「入団試験の準備をしろ!」
「!」
「三人だ!」
周囲がさらにざわつく。
「いきなり入団試験!?」
「しかも三人!?」
「師匠の息子だからか……?」
俺も驚いていた。
「え?」
リーダーはニヤリと笑う。
「師匠の息子がどれほどの実力か見てみたくてな」
「もちろん特別扱いはしない」
「だが挑戦する資格は十分ある」
リーダーは背を向ける。
「ついてこい」
「試験を受けさせてやる」
俺は振り返る、キャリーは静かに笑っていた。
「面白くなってきたね」
リバは驚いている。
「まさかこんな話になるとはな……!」
俺は拳を握る。
「行こう」
こうして三人は――
最強クラスのパーティ『アステラ』の入団試験へ挑むことになった。




