第九十四話 魔兵団本部
俺達は討伐団のアジトを出発して数日、目的地へ辿り着いていた。
「凄く大きいな……」
俺は思わず呟く。
目の前にそびえる巨大な建物は魔兵団本部だ。
王国中の魔兵団が集まる中心地であり、多くの強者達が所属する場所。
入口には人が溢れていた、人間、魔族、様々な人がが行き交っている。
キャリーが周囲を見回しながら言う。
「あれ全部魔兵団?」
「多分な」
二人は人混みを抜け、本部の中へ入った、中はさらに賑やかだった。
依頼を受ける者、報告を行う者、仲間と話す者、様々な人が居た。
「受付はあっちみたい」
キャリーが指差す、その先には長いカウンターが並んでいた、二人は列へ並んだ。
しばらく待つと順番が回ってきた。
「こんにちは」
落ち着いた女性の声、受付の向こうには一人の女性が座っていた、整った身なり、柔らかな笑顔、胸元には魔兵団の紋章が付いている。
「私はエントリと申します」
「ご用件をお伺いします」
アルは魔兵団免許を取り出した。
「試験に合格したので登録に来ました」
エントリは免許を確認する、そして微笑んだ。
「合格おめでとうございます」
「それでは簡単に魔兵団について説明いたしますね」
二人は頷いた、エントリは一枚の紙を取り出す、そこには階級一覧が書かれていた。
「魔兵団には四つのランクがあります」
指先が一番下を示す。
「ブロンズ」
「見習いや駆け出しの魔兵団が所属する階級です」
続いてその上。
「シルバー」
「手練れと呼ばれる実力者達です」
エントリはさらに説明を続ける。
「ゴールド」
「熟練者の階級です」
「一部の方は優秀な団の団長として活躍されています」
キャリーが首をかしげた。
「パーティって?」
「複数の魔兵団で構成された組織です」
「依頼や活動を効率的に行うために存在しています」
「なるほど」
俺はは思わず感心する、ゴールドともなれば相当な実力者なのだろう。
そして最後の階級、エントリの声も少しだけ真面目になる。
「プラチナ」
「魔兵団最高位です」
「王国最強クラスの方々が所属しています」
「また王の選挙へ立候補する資格も得られます」
俺とキャリーは顔を見合わせた、王の選挙、想像していた以上に大きな話だった。
「すごい……」
キャリーが素直に呟く。
「皆様はブロンズからのスタートとなります」
「頑張ってくださいね」
エントリは優しく微笑んだ、その時だった。
「はああああ!?」
突然隣の受付から大きな声が響く、俺達は思わず目を向ける、そこには一人の少年がいた。
緑色の髪と緑色の瞳、俺と同じ位の身長の人間。
だが、その表情は絶望そのものだった。
「また団員になるの断られたって……?」
「全然有名でもないパーティなのに……」
少年は頭を抱える。
「やっぱり俺はダメなやつだ……」
「才能もないし……」
「弱いし……」
「俺みたいなのを取ってくれるパーティはやっぱり無いのか……」
もの凄く後ろ向きだった、受付の職員も慣れているのか、呆れた顔をしている。
「周りの迷惑になるので静かにしてください」
「それに用事が済んだなら行ってください」
「待っている方がいるので」
「あっ……」
少年は肩を震わせる。
「す……すいません……」
ぺこりと頭を下げる、そして小さくなりながら歩き始めた。
「……」
俺とキャリーはその背中を見ていた。
俺は学園に居た頃の自分を思い返した、何も出来なかった自分、校長先生やライス先生が手を差し伸べてくれるまでの自分を。
だから放っておけなかった、気付けば俺は歩き出していた。
キャリーは驚いた表情をし、言う。
「……ちょっと、アル!?」
キャリーは駆け足で俺の後ろを付いてきた、俺達は立ち去ろうとする少年の後を追いかけた。




