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第九十一話 勝者
立場は完全に逆転していた、ナイはダークの胸を貫いている、俺は荒い呼吸のまま叫んだ。
「降参しろ、ダーク!」
汗が頬を伝う、身体は限界だった。
「急所は僅かにずらした!」
声を張り上げる。
「さあ! 降参しろ! ダーク!」
静寂、会場中が二人を見つめていた。
やがてダークが笑う。
「ククク……」
小さく、だが心底楽しそうに。
「まさか……こうなるとは……」
その瞳からは敵意が消えていた、代わりにあったのは満足感だった。
「強者との戦いは……やはり楽しい……」
俺は眉をひそめる。
「ダーク……?」
ダークは空を見上げた、どこか遠くを見るように、そして静かに呟く。
「楽しかった……」
次の瞬間、ダークは自ら身体をずらした、ナイがダークの胸を切り裂く。
ふらりと身体が揺れ、地面へ倒れ込んだ。
ドサッ――。
会場は静まり返る、誰も声を出さない。
俺はしばらく動けなかった、ただ倒れたダークを見つめる、返事はない、動きもない。
やがて、長い沈黙の後、推薦書が重々しく告げた。
「勝者――アル!」
歓声は上がらない、ただ静かな風だけが吹いていた、俺はナイを握り締める。
勝った、確かに勝った。
だが、胸の中には言葉にできない感情だけが残っていた。




