第九十話 決着
ダークはゆっくりと腕を上げた。
闇が集まる、勝負を終わらせるための一撃、その表情には余裕があった。
いや、余裕しかなかった。
「あぁ……」
うっとりとした声。
「惜しい……」
「強者が……」
その瞳は俺を見つめていた。
「消える……」
そして口元を歪める。
「私の手で……」
俺は動かない、膝をついたまま、額を伏せたまま、ひたすらその瞬間を待っていた。
ダークはさらに腕を振り上げる、自身の勝利を完全に疑いもしなかった。
だから――
見落とした、俺の視線を、俺の狙いを、そして闘技場の外にある一本の剣を。
(来た!)
俺の目が開く、僅かな時間で溜まった魔力を振り絞った。
狙うのは自分じゃない。
「転移魔法!」
対象は――ナイ!
一瞬、空間が歪む。
そして闘技場の外にあったはずの剣が消えた、ダークが一拍遅れて気付く。
だが遅い、次の瞬間、ナイは俺の手の中にあった。
「っ!?」
ダークの表情が崩れる、俺は立ち上がる、魔視は使えない、魔力もほとんど残っていない。
だが必要なかった、ここまで戦った、何度も見た、急所は覚えている。
狙いは一つ、ダークの心臓に残った力を全て使う。
そして――
突いた。
ドッ――!!
鋭い一撃、迷いのない一突き、ダークは防御しなかった。
いや、できなかった、完全に油断していたから。
ナイは急所へ届いた、ダークの動きが止まり、会場が静まり返る、誰も声を出せない。
俺は荒い呼吸のまま、ナイを構え続ける。
そして静かに告げた。
「お前の負けだ」
ダークの目を真っ直ぐ見つめる。
「降参しろ」
一拍。
「ダーク」




