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第八十八話 獲物
ダークは立ち止まった、もう十分だとでも言うように、静かに、穏やかにアルを見つめる。
そして告げた。
「強者を殺るつもりはない……」
先ほどまでの歓喜の笑みは薄れていた、代わりにあるのは妙な真剣さ。
「降参しろ……」
会場が静まり返る、誰も声を出さない、ダークは続ける。
「お前を殺りたくはない」
その言葉は本心だった。
少なくとも、俺にはそう聞こえた。
「早くしろ……」
降参、たった二文字のそれを口にすれば終わる。
命の危険もなく、試験も終われる、それでいいはずだ。
だが俺は受け入れられなかった、敗北を、ここまで積み上げてきたものを。
簡単には諦められなかった、拳を握り震える。
(悔しい……!)
でも勝ち筋が見えない、武器もない、アルは必死に考える。
(何か……)
何か、何か一つ、逆転の手。
(何か……!)
考えるが浮かばない。
(無い……)
何もない、打つ手なんて。
残って――
そこまで考えた時だった、俺の思考が止まる。
(……本当に何もないのか?)
脳裏に浮んだのは逆転の一手。
気付けば口元がわずかに動いていた。
「まだだ……」
(これなら行ける……!)
その瞳に再び光が宿った。




