第八十話 運否天賦
最終試験は続く、勝者と敗者。
そのどちらも試合が終わった瞬間に転移魔法でこの会場から姿を消していく。
だから、時間が経つにつれて観客席は少しずつ空いていった。
俺は静かに試合を眺めていたが頭の中では別のことを考えていた。
誰と当たるのか、誰とだけは当たりたくないか、思い浮かぶのは一人、それは――。
ダーク、あの影の調停者の男、第一次試験で戦った。
いや、正確には違う、戦ったのは分身だ、しかも本体より遥かに弱い分身、それですら俺たちは三人がかりでようやく退けた。
正面から勝てる気がしない、正直に言えば今戦っても勝算は薄い、俺は無意識に拳を握った。
(頼むから別の相手であってくれ……)
そんな願いも虚しく試合は進む。
第十八試合終了、第十九試合終了、第二十試合終了。
そして推薦書が大きく光った。
『さぁてぇ!!』
広場に響く声、残った受験者たちが顔を上げる。
『第二十一試合!!』
嫌な予感がした、理由はない、ただ胸騒ぎだけがあった、推薦書は楽しそうに笑う。
まるでこの瞬間を待っていたかのように高らかに叫んだ。
『アル!!』
俺の名前、心臓が跳ねる、周囲の視線が集まる。
『ダーク!!』
「……は?」
思わず声が漏れる、冗談だろ、とそう言いたかった。
だが、推薦書は止まらない。
『両者前へ!!』
――少し離れた場所、黒い外套を纏った男が立ち上がる。
ダークはまるで全てが予定通りだと言わんばかりに言葉を発した
「なるほど」
「運命というのは、時々面白い」
俺はナイの柄を握る。
最悪だ、間違いなく今までで一番最悪の相手。
だが――
逃げることはできない、光る魔法陣が足元に現れる、転送の時間だ。
俺は深く息を吸う、そしてゆっくりと前を向く、運命のいたずらか、それとも必然か。
どちらでもいい、この戦いだけは避けられない。




