第七十八話 キャリーvsベル
闘技場で向かい合う二人。
ベルと呼ばれた魔族は小柄で背丈はキャリーよりも低く、派手な雰囲気も威圧感もない。
だが――。
「……」
異様なほどに落ち着いている、俺は魔視で相手を見る。
魔力の流れを見る、安定していて、無駄がない。
おそらくいくつもの修羅場を潜り抜けてきたのだろう、とそう感じた。
だが、キャリーだって強い、討伐団で戦い続けてきた、きっと危険な依頼もこなしてきたはずだ、簡単に負けるような人じゃない。
推薦書が叫ぶ。
『それでは――開始!!』
その瞬間、二人が同時に動く。
「水撃!」
「水撃」
ほぼ同時に二つの水弾が飛ぶ。
そして、激突した。
バシャァァッ!!
水しぶきが舞った、魔法は相殺、観客がざわつく。
「同時か!?」
「威力も同じくらいだぞ!」
キャリーが目を細める、ベルも変わらず冷静なまま、次の魔法を出す
水槍、水刃、水球。
次々とぶつかる度に相殺され、決定打が生まれない。
まるで鏡像、得意魔法も同じで戦い方も似ている。
だからこそ俺は気付く。
「なるほど……」
これは単純な魔力勝負じゃない、威力勝負でもない、先にミスをした方が負ける、先に相手の思考を読まれた方が負ける。
この戦いは――
運だ。
キャリーとベル、二人の視線がぶつかる、互いに笑わない、互いに油断しない静かな戦い。
だが、だからこそ緊張感があった、最初に相手の一手先を読んだ者が勝つ。
そんな戦いが繰り広げられていた。




