第七十七話 緊張
それからも試合は続いた、一方的な試合や接戦、意外な逆転など様々な戦いが繰り広げられる。
その全てを俺は見ていた、魔視を使いながら。
魔力の流れや身体強化の癖、魔法の構築速度など、少しでも多くの情報を得るために。
「なるほど……」
思わず呟く、魔兵団試験、そこに集まるのは実力者ばかりだ、学ぶことが多い。
その隣ではキャリーが試合を見ていた。
だが、どこか様子がおかしい、落ち着いていない、普段なら軽口の一つでも飛ばしそうなのに今日は妙に静かだった。
「緊張してるのか?」
俺が聞く、キャリーは少しだけ驚いた顔をした。
「え?」
そして、苦笑する。
「まあね」
「さすがにここまで来るとね」
冗談めかして言う。
だが、いつもの余裕は少し薄かった。
それでも試験は続く、一試合、また一試合と勝者と敗者が決まっていく。
そして、ついにその時が来た、推薦書が大きく光る。
『第十四試合!!』
『次の出場者は――』
キャリーが息を呑む。
『キャリー!!』
「っ……」
ついに呼ばれた、キャリーの番だ、俺は隣を見る、キャリーはゆっくり立ち上がった、見るからに緊張している。
それでも、表情は前を向いていた。
そして、推薦書はもう一人の名前を告げる。
『ベル!!』
人混みの中から一人の魔族が前へ出る、身長の低いシアン色の肌の女性、緊張しているキャリーとは反対にその瞳は冷静に前を見据えている。
それだけで強い相手だと分かった、キャリーも相手を見つめる。
ベルもまた無言でキャリーを見ていた。
闘技場に魔法陣が現れ、転送の光が輝く、キャリーは一度だけ振り返った。
そしてニッと笑う、いつもの笑顔。
「アル」
「ん?」
「応援お願いね」
そう言い残して、光の中へ消えた、俺は苦笑する、そして小さく呟いた。
「……頑張れ、キャリー」




