第七十一話 品定め
確かに切った、ナイはダークの脳天を捉えていた、なのに何かがおかしい。
「……?」
俺は目を見開く、目の前のダークの身体が揺らぎ、輪郭が崩れた、まるで煙のように。
いや、影のように。
そしてキャリーが真っ先に答えへ辿り着いた。
「影分身……」
その言葉に俺は固まる。
次の瞬間、ダークの身体が崩壊した、黒い影となって静かに消えていく。
「なっ……」
オクも言葉を失う、勝った、そう思った。
だが違う、今消えたのはダークじゃない、分身だ、本体ではない。
今の戦闘を思い返す、確かに妙な違和感があった、余裕を見せつけているようにも見えたのは分身だったからだとしたら全部繋がる。
「あいつ……」
「最初から……」
キャリーは青ざめていた。
「本体じゃなかったの……?」
その声は震えている、信じたくなかった、俺たちは三人で、相手は一人、それでもやっとの思いで倒したのは本体より遥かに弱い分身。
つまりあのダークは最初から油断などしていなかった、俺たちを品定めをしていただけなのだ、まるで商品を見るように、値踏みするように。
夜風が吹いた、誰も喋らない、勝ったはずなのに達成感はなかった。
残ったのは嫌な汗と底知れない不安だけ。
オクが小さく呟く。
「じゃあ……」
「本物はどれだけ強いんですか……?」
誰も答えられなかった、俺たちはただ後味の悪い勝利を噛み締めるしかなかった。




