第七話 両親
「お前が思っている以上にな」
グロウの言葉に、アルは思わず息を呑んだ。
校長室に静寂が流れる。
やがてグロウはゆっくりと口を開いた。
「お前の父、カーレッジ・サクリファイス」
「そして母、カインド・サクリファイス」
「二人は優秀な魔兵団じゃった」
アルは目を見開く。
魔兵団。
それは人間と魔族の平和を守るために存在する世界最高峰の戦力、誰もが憧れる精鋭部隊だった。
「父親は統率者を務め、多くの兵を生還させた」
「母親は回復魔法の名手でな」
「瀕死の兵を何度も救ったと聞いておる」
グロウは懐かしそうに目を細める。
「二人とも決して最強ではなかった」
「だが誰よりも仲間を大切にする人間だった」
その言葉にアルは少し俯く、どこか自分と重なる気がした。
「特にカーレッジは有名でな」
グロウは小さく笑った。
「無茶をするなと言われても仲間を助けに行く」
「危険だと言われても飛び込んでいく」
「何度怒られたかわからん」
アルは苦笑した、なんだか自分のことを言われている気がしたからだ。
「カインドも同じじゃ」
「口では止めるが、結局は一緒に飛び込んでいく」
「似た者夫婦じゃったよ」
校長室に少しだけ穏やかな空気が流れる、アルは初めて知る両親の姿に耳を傾けていた。
写真の中で笑う二人、その姿が少しだけ鮮明になる。
するとグロウは真っ直ぐアルを見た。
「さて」
老人の声が響く。
「お前はなぜこの学園に入った?」
アルは迷わず答えた。
「強くなりたいからです」
グロウは首を横に振る。
「違う」
「え……?」
「もっと奥の理由じゃ」
アルは言葉を失う。
すると老人は静かに言った。
「お前がこの学園に入学したのも」
「魔兵団に入るためじゃろう?」
その言葉にアルの肩が震えた、図星だった。
幼い頃から抱き続けてきた夢、誰にも話したことのない目標。
それをグロウは見抜いていた。
アルは拳を握る、そして小さく頷いた。
「……はい」
「俺は魔兵団に入りたいです」
「父さんと母さんみたいに」
「誰かを守れる人になりたいんです」
校長室に静かな決意の声が響いた、しかし、グロウの表情は変わらない、老人はただ静かにアルを見つめていた。




