第六十六話 狙い
ダークボール、闇属性の高威力魔法、威力は高い。
だが、速度はそこまで速くない、普通なら避ける、避けるのが正解だ。
だけど俺は動かなかった、後ろにはキャリーがいるから。
なら、答えは一つ。
「うおおおおっ!!」
ナイを握る、身体強化を発動し、全力で踏み込む。
そして迫り来る闇へ向かって斬りかかった。
ガギィィィィン!!
金属音が森に響く、闇と剣がぶつかる、あり得ない光景だった。
だがナイは確かに受け止めていた。
「ぐっ……!」
想像以上に重く、押し返される、腕が軋み、足が沈む。
そしてナイが悲鳴を上げた。
ビキッ。
小さな音、だが聞こえた、俺は身体強化をさらに強め、力を込める。
その時。
『違う、ただ押し返すんじゃない』
ライス先生の声が蘇る。
『力任せに戦うな』
『考えろ』
「そうだ……!」
押し返せないなら、ずらすんだ、軌道を変える、少しだけでいい、キャリーから外せれば勝ちだ。
俺は力の向きを変える、ナイの角度を調整する、すると闇が傾いた。
いける、そう思った、その時。
バチッ。
電撃のような感覚に身体が震える。
「え?」
次の瞬間、腹の奥が温かくなった、妙な感覚だった、熱い、でも痛くない。
いや、違う、一瞬遅れて激痛が襲う。
「がっ……!?」
息が止まった、視線を落とすとそこにあったのは黒い刃、ダークの短剣が俺の腹を貫いていた。
「っ……!」
やられた、気付かなかった、ダークボールに意識を向けた瞬間、距離を詰められていた。
いや、違う、最初からだ、最初からコイツの狙いは―――
ダークボールじゃない、俺の意識を奪うこと、その一瞬を作ること。
本命はこの一撃だった、ダークが静かに俺を見ている。
まるで勝利を確信したように。




