第六十四話 弱者
「弱者が減る」
その言葉が頭から離れない、俺は一歩前へ出た。
そして目の前の黒い人影を強く睨みつける。
「……」
怒りを隠さない、キャリーを傷付けた、それだけで十分だった。
だが黒い人影は気にした様子もない、むしろ俺を観察していた、品定めするように、値踏みするように。
そしてぽつりと呟く。
「3……」
沈黙、少し考える。
「いや」
「2……か」
「何がだ」
俺は低い声で尋ねる。
すると、黒い人影は静かに答えた。
「君の評価だよ」
「……は?」
意味が分からない、だが相手は真面目だった。
「君も弱者」
「邪魔者だね」
まるで天気の話でもするように言う、俺は拳を握った、キャリーも険しい顔になる。
そして黒い人影はゆっくりと告げた。
「僕は……」
闇が揺れる、夜の闇と混ざるように、その存在感が濃くなる。
「影の調停者」
「第10影将、ダーク」
その名前と同時に背筋に寒気が走る、ダークは続ける、感情のない声で。
「より良き世界のため」
「弱者を摘む存在」
まるでそれが正義だと信じているように、迷いなく、当然のことのようにそう言った。
俺は理解した、コイツは危険だ、強いからじゃない、考え方が、根本から違う。
ダークは腰に下げた短剣へ手を添える。
「安心して」
「痛みは一瞬だから」
静かな声、それなのに今まで会ったどんな敵より恐ろしく聞こえた。
そして、闇が揺らぐ、ダークの姿が夜の中へ溶けていく。
「っ!」
俺はナイを構えた、魔視を最大まで高める。
来る、今度は化け物じゃない、人間との戦いが始まる。




