第六十二話 全力疾走
「キャリー……?」
だが、こんな時間にあんな派手な魔法を使う理由がない。
つまり、戦っている、その考えに至った瞬間、嫌な予感が全身を駆け抜けた。
「……!」
俺は立ち上がる、オクも驚いた顔をしていた。
「アルさん?」
「オク!」
「近くで身を隠して!」
「え?」
「絶対についてくるな!」
オクが目を丸くする。
「アルさん!?」
だが説明している時間はなかった、俺は地面を蹴る、全力疾走で木々の間を駆け抜ける、夜風が顔を叩く。
そして魔視を発動した、視界が変わる、魔力を探り、一直線にさっきの方角へ。
「……!」
見えた、間違いない、キャリーだ。
俺が何度も見てきた魔力、水の魔力、今も激しく揺れている、戦闘中だ。
だがそれだけじゃない、もう一つ、別の魔力、俺は眉をひそめた。
「なんだ……?」
巨大じゃない、あの化け物たちとは違う、圧倒的な魔力でもない。
だが確実に強い、そんな気配だった。
「……」
魔視を集中させる、もっと詳しく、もっと深く、魔力の性質を読む。
そして気付く。
「違う」
「化け物じゃない」
なら何だ、答えはすぐに出た、魔力の流れ、人型、間違いない。
「これは……」
「人間だ……!」
受験者同士の戦い、その可能性に俺の表情が険しくなる。
推薦書は言っていた、受験者同士の争いは禁止されていない。
だが、だからといって、見過ごせるわけがない。
キャリーは仲間だ、友達だ、見捨てることなんて出来ない。
「待ってろ!」
夜の森を駆ける、そして、視界が開けた。




