第六十一話 夜
気が付けば空はすっかり暗くなっていた、第一次試験開始からかなりの時間が経っていた。
森の夜は不気味だった、昼間以上に視界が悪く、どこから魔物が現れるかも分からない、俺は魔視を使いながら周囲を警戒していた。
その間にさっき助けた――いや。
正確にはムウに助けられた魔族の少女とも少し話をした。
彼女の名前はオク。
年齢は俺たちと同じくらい、得意魔法は雷魔法らしい。
「雷か」
俺は少し感心した。
「カッコいい魔法ですよね」
オクが少し嬉しそうに言う、俺も頷いた。
「ああ」
「威力も高いし速い」
「けれど」
「探知は不得意だもんな」
オクの肩がぴくっと動く、図星らしい。
「この試験とは相性が悪い」
「うぅ……」
「否定できません……」
雷魔法は戦闘向きだ。
だが、今回みたいな試験には向いていない。
逆にキャリーの水魔法なら索敵もできる、得意分野の差だった。
しばらく沈黙が流れ、やがてオクが姿勢を正した。
「そういえば」
「?」
「私ちゃんとお礼を言えてませんでしたよね」
俺は首を傾げる、オクは真剣な顔だった。
「助けてくれてありがとうございました」
その言葉に俺は苦笑した。
「いや」
「実際助けたのはムウだし」
「それでも」
「あの時私の前に立ってくれたじゃないですか」
俺は言葉に詰まった、確かにそうした、でも勝てる見込みなんてなかった、ただ身体が動いただけだ。
だから少し照れくさかった。
「まあ」
「無事で良かったよ」
オクが小さく笑った、少しだけ空気が和らぐ。
俺は再び魔視を発動した、周囲を確認する、魔物、受験者、魔力反応、慎重に探る、そして。
「大丈夫そうだな」
「え?」
「魔視で見た感じ」
「近くにヤバいのはいない」
オクの表情が明るくなる。
「本当ですか!」
「ああ」
「だからしばらく――」
言いかけた、その時だった。
バァァァン!!
夜空で何かが弾けた、巨大な水しぶき、月明かりを反射して煌めく水。
しかもそれほど遠くない、俺は思わず立ち上がった。
「あれは……」
見覚えがあった、いや、見間違えるはずがない、水魔法だ。
しかも、あの魔力には見覚えがあった、オクも空を見上げていた。
「誰か戦ってる……?」
俺は嫌な予感を覚える、そしてその名前を呟いた。
「キャリー……?」
夜の森に新たな異変が起ころうとしていた。




