第五十六話 天才
俺の前に現れたのはムウだった、学園最強、天才、俺とは違う世界を歩いている男。
ムウは化け物を見るなり、少し考え込むように顎へ手を当てた。
「うーん……」
まるで珍しい虫でも観察しているような態度だった。
「やっぱり細工されてんな」
その一言に俺は反応する。
「細工?」
ムウは答えない、ただ化け物を見続ける。
「普通の魔物じゃねぇ」
「かなり無理やり作ってんなぁ」
構造?
作っている?
何を言っているのか分からない。
だが、ムウには何かが見えているらしい、そして化け物もまた、ムウを見ていた。
先ほどまで無機質だった視線、それが初めて変化する、まるで警戒しているように、敵として認識したように。
空気が張り詰める、俺は魔視を使う。
するとさらに驚いた、化け物から放たれる膨大な魔力、その圧力に俺自身が気圧されていた。
思わず後ずさる、一歩、また一歩、呼吸が苦しい、立っているだけで精一杯だ。
だがムウは違った、平然としている、まるで何も感じていないかのように。
「威勢がいいな」
ムウが笑う、その顔には余裕しかない、そしてゆっくりと手を上げた。
「来いよ」
明らかな挑発、その瞬間だった、化け物が消える。
「!?」
見失った、まただ、魔視でも追えない、次の瞬間。
ガギィィィィィン!!
耳をつんざく金属音、衝撃波が周囲へ広がり、木々が揺れ、地面が砕けた。
ムウが炎を纏った剣で受け止めていた、いつ抜いたのかすら見えない。
「へぇ」
「魔物の癖に使えるんだ」
化け物の拳とムウの剣が互いがぶつかる度に轟音が響く。
ガギィン!
ギィン!
常識外れの戦い、俺は動けなかった、もちろん割って入ることなどできない。
理解した、これはもう俺たちの戦いじゃない。
化け物と天才、別次元の戦いが始まったのだ。




