第五十五話 邂逅
動くな、焦るな、考えろ。
俺は呼吸を整え、魔視を発動する。
視界が変わる、魔力の流れが見える、奴の急所を探せ、ソードガーディアンの時のように勝機を見つけろ。
「……っ」
だが、見つからない、魔力は確かに見える、むしろ見えすぎる、全身を異常な密度の魔力が覆っている。
心臓、首、頭、どこを見ても急所らしい急所がない。
「ばかな……」
思わず息を呑む、生物なら必ず弱点がある、なのにコイツには見当たらない。
まるで全身が急所であり、全身が急所以外でもあるような、意味の分からない状態だった。
額に汗が流れる、動きを読むしかない。
身体強化、魔視、全部使う、動いた瞬間を捉える、そう決めた。
細身の人影がゆっくりと足を前へ出す。
(来る!)
その瞬間――
俺は違和感を覚えた。
あれ?
近い、近すぎる。
さっきまで遠くにいたはずなのに、今は目の前に奴の顔がある。
なんでこんなに――
化け物の鋭い爪がアルの喉元に迫る。
刹那。
ドォォォォォン!!
轟音、視界が真っ赤に染まる、巨大な烈炎、まるで炎の壁、俺と化け物の間を横切った。
熱風が吹き荒れ、木々が揺れ、地面が焦げる。
「なっ!?」
俺は目を見開いた、炎の向こう、一人の少年が立っていた。
見覚えがある、少し高い身長、自信に満ちた表情、学園時代誰もが知っていた天才。
ムウだった、ムウは肩を回しながらまるで散歩の途中みたいな顔で言う。
「そこにいんのは」
「うるさい悲鳴を出した女と……」
ムウの視線が俺に向く、少しだけ考えるような顔。
「あー」
「あんた」
指を差した。
「確か……アルだったっけ」
俺は呆然とする。
まさかこんな場所で、こんな状況で再会するとは思わなかった。
そして、目の前の化け物が初めて反応を見せる。
細い目がわずかにムウへ向けられたその瞬間、空気が変わった。
まるで怪物同士が互いを認識したように。




