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第五十三話 異常
試験開始から約二時間―――
森の中を歩きながら俺はあの魔物のことをずっと考えていた。
(なんて言う魔物なんだ……)
頭の中で図鑑をめくる、巨大な身体、異常な魔力、圧倒的な存在感。
だが、思い当たる魔物がない。
(知らない……?)
俺は人一倍勉強してきた、魔物図鑑も読み込んだ、それなのにあの魔物だけは一致するものがない。
(ただの試験じゃない)
そう確信していた、ここは危険すぎる、受験者を試すにしては異常だ。
まるで、試験とは別の何か、大きな別の目的があるような感じさえする。
(何かがおかしい)
そう思ったその時。
「きゃあああああっ!!」
甲高い悲鳴、森に響き渡る、俺は反射的に顔を上げた、女の声だ、しかも近い。
「っ!」
気付けば走り出していた、考えるより先に身体が動く、全速力で声の方に。
「くそっ!」
嫌な予感がした、この森で悲鳴、きっとろくな状況じゃない、頭じゃ分かってる、放っておけ、試験だ、危険を冒すな、お前が行く必要はない、ということは。
だが足は止まらない。
「……!」
やがて目の前の草むらが開けた、視界が広がる。
そして俺は見た、そこにあった光景に思わず息を呑む。
「―――」
目の前には恐怖で震える一人の受験者と前方から迫る影があった。




