第五十二話 レベル
時を同じくして第一次試験の森、キャリーもまた生き残るために行動していた。
「はぁ……」
大木の上、枝に腰掛けながら周囲を見渡す、その表情には余裕がなかった。
「噂には聞いてたけど……」
「ヤバすぎ!」
本気だった、キャリーは水魔法を得意魔法とし、高精度の魔法を出すことが出来る、その中には偵察用の魔法もあった。
水分身、自分の代わりに周囲を探らせる便利な魔法。
だが先ほどその水分身が消し飛んだ、一瞬で、抵抗する暇すらなく。
「私の水分身が……」
「きっと見つかったら終わりだ……」
水分身を破壊した魔物、あれは危険という言葉では足りない、災害だった。
「これ何人生き残れるのよ……」
思わず空を見上げる、するとその時。
ドォォォォォン!!
遠くから轟音が響く、森が揺れ、鳥たちが一斉に飛び立つ。
「ひゃっ!?」
キャリーは飛び上がる。
「な、何!?」
慌てて音の方向を見る、かなり遠い、だが確実に何かが起きていた。
――その頃。
轟音の発生源、そこには巨大な魔物が倒れていた。
熊のような魔物、木々より大きな身体、鋭い牙、分厚い毛皮、明らかに危険な存在。
だがその巨体は地面に沈んでいる、すでに動かない。
その前に立つ一人の少年、ムウだった。
「……へぇ」
少し驚いたようにそう呟く、手には剣、周囲には焦げ跡、魔法の痕跡。
「このレベルなんだ」
倒れた魔物を見る、ムウは楽しそうに笑う。
「退屈しなくて済みそうだ」
そしてムウは森の奥へ歩き出した。
まるで試験を受ける側ではなく、試験する側のような余裕を見せながら。
第一次試験、その森には、化け物が二種類存在していた、魔物と受験者だ。




