第五十話 第一次試験
気が付くと俺は森の中に立っていた。
「……え?」
辺りを見回す、巨大な木々、生い茂る草、見たこともない景色、さっきまでいた中央広場はどこにもなかった。
「転移……?」
思わず呟く、しかも普通の転移魔法ではない、受験者全員を一瞬で別の場所へ移動させたのだ。
「こんな大規模な転移魔法、一体どうやって……」
考えようとしたその時だった。
「ククク……」
不気味な声が聞こえた。
「!?」
俺は反射的にナイへ手を伸ばす、敵か、そう思った。
だが周囲には誰もいない。
「下だ」
声の主を探していると、再び声が聞こえた、今度は近い、いや、近すぎる。
俺はゆっくり視線を落とした、そこにあったのは推薦書だった、推薦書が喋っていた。
「うわっ!?」
思わず飛び退く、推薦書は気にした様子もない、むしろ楽しそうだった。
「第一次試験について説明を開始する」
「待て」
「質問は受け付けない」
「まだ何も聞いてない」
「受け付けない」
理不尽だ、推薦書は勝手に話を続ける。
「第一次試験はサバイバルだ」
森を指し示すように紙が揺れた。
「この森で一日生き残れ」
「一日?」
思ったより短い、そう思った瞬間、推薦書が笑う。
「甘いな」
嫌な予感しかしない。
「この森には魔物がわんさかいる」
「その魔物を倒すもよし、逃げるもよし、隠れるのもいいぞ」
推薦書は楽しそうに続ける。
「なお受験者同士の争いは禁止されていない」
「は?」
「奪うも自由」
「騙すも自由」
「見捨てるも自由」
俺の表情が険しくなる。
つまり、敵は魔物だけではない。
推薦書はさらに声を低くした。
「ククク……」
「遺書は書いてきたな?」
「書いてない」
「人生の最後を覚悟しておけよ……」
「怖いこと言うな!」
だが、推薦書はそれ以上答えない、最後に光を放つ。
そして紙へ戻った。
森には風の音だけが響く。
「……」
俺は推薦書を見つめる、何だったんだ今の。
しかし、考えている暇はなかった。
ガサッ。
近くの茂みが揺れる、反射的に近くの木々に身を隠す。
魔物か、それとも受験者か、分からない。
俺は警戒しながら魔視を発動した。
こうして魔兵団試験、第一次試験「サバイバル」が始まった。




