第五話 努力
夕暮れ、学園からの帰り道をアルは一人で歩いていた。
いつもなら新しい魔法の話を考えたり、明日の授業を楽しみにしたりする。
だが今日は違った、訓練場で浴びた笑い声が何度も頭の中で響く。
『やっぱり不発じゃねぇか!』
『魔法学園で魔法が使えないとか終わってる』
『身の程知らずにも程があるぜ』
アルは拳を握り締めた。
「……くそ」
気付けば俯いていた、そして家へ帰る。
小さな家。
今はもう、一人しか住んでいない家。
静まり返った部屋に入ると、アルは荷物を置き、そのまま棚へ視線を向けた。
そこには一枚の写真が飾られている、まだ幼かった頃の自分、そして優しく笑う父と母。
アルはゆっくりと写真を手に取った、しばらく黙って見つめる。
やがて――。
「なぁ……父さん……母さん……」
声が震えた。
「俺、ちゃんと頑張ってるんだ」
誰に聞かせるわけでもない、ただ胸の内から言葉が溢れた。
「みんなが遊んでる時も勉強した」
「魔法だって誰より練習した」
「毎日、毎日、何回失敗しても続けた」
写真を握る手に力が入る、悔しさが込み上げる。
「なのになんでだよ……」
唇を噛む。
「なんで俺だけできないんだよ……」
目から涙が零れそうになる、だが必死に堪えた。
弱音なんて吐きたくなかった、諦めたくなかったから。
それでもぽたり、と涙が落ちる。
「努力は報われるんじゃなかったのかよ……」
アルは写真を胸に抱き寄せた。
「父さん……母さん……」
返事はない、部屋には静寂だけが残る、窓の外では夜の帳が降り始めていた。
それでもアルは諦めなかった、涙を流しながらも、心のどこかで信じていた、いつか必ず、自分にもできる日が来るのだと。




