第四話 身の程知らず
アルは訓練場の中央へと歩み出た。
周囲から無数の視線が集まる、それは期待の視線ではない、好奇心と嘲笑の混じった視線だった。
「さて、アル・サクリファイス」
教師が腕を組む。
「お前の得意魔法を見せてみろ」
「はい!」
アルは元気よく返事をした。
そして前方へ手を突き出す、深く息を吸う、体内の魔力を感じ取る。
授業で何度も学んだ通りに、誰よりも真面目に練習した通りに、魔力を一点へ集中させる。
(出ろ……!)
さらに魔力を込める。
(出てくれ……!)
額に汗が浮かぶ、腕が震える、魔力だけなら確かに集まっている。
だが――。
何も起こらない。
炎も、風も、水も、土も、何一つ現れなかった。
沈黙。
そして。
「ぷっ……」
誰かが吹き出した。
「ははっ!」
「やっぱり不発じゃねぇか!」
「マジで何も出てねぇ!」
「得意魔法なしって本当だったんだな!」
笑い声が訓練場に広がる。
人間も魔族も関係なく、生徒たちは口々に笑った。
アルは悔しそうに手を見つめる、それでも諦めず、もう一度魔力を集中させた、だが結果は同じ、何も起きない。
教師は小さくため息をついた。
「どうした、アル・サクリファイス」
訓練場が静かになる、教師は冷たい視線を向けながら言った。
「このままだと0点だぞ?」
その言葉に周囲から再び笑い声が漏れる。
「0点確定だろ」
「魔法学園で魔法が使えないとか終わってる」
「身の程知らずにも程があるぜ」
だが、アルは挫けなかった、握った拳に力を込める、そして前を向く、まだ終わっていない、そんな意思だけは、誰よりも強く瞳に宿っていた。




