第四十六話 特訓
アジトへ戻ってから数日後、俺はビッグの部屋へ呼ばれていた。
「おう」
団長は袋を机へ置く。
ドサッ。
思った以上に重い音だった。
「今回の報酬だ」
「え?」
思わず固まった、袋の中には大量の金貨が入っていた。
「こんなに……」
「面倒な依頼だったからな」
「むしろ安いくらいだ」
俺は慌てて頭を下げた。
「ありがとうございます!」
「気にするな」
そしてビッグは続ける。
「それと」
「しばらくここにいろ」
「え?」
「寝床も飯もある」
「試験も近いんだろ?」
「なら今のうちに鍛えとけ」
俺は目を見開いた。
「いいんですか?」
「嫌なら追い出すが?」
「お願いします!」
即答だった、部屋の外から笑い声が聞こえる、どうやら聞かれていたらしい。
◆
それからの日々、俺は特訓漬けになった、ハムとは剣術。
「甘い!」
ガキィン!
「もっと腰を落とせ!」
「はい!」
何度も地面へ転がされた、メンとは索敵と実戦経験。
「相手を見るだけでは駄目です」
「周囲も見てください」
「はい」
森で何度も訓練した、キャリーとは連携。
「そこ!」
「今!」
「分かった!」
ソードガーディアン戦で見えた課題、仲間との呼吸を合わせる練習を重ねた。
他にも槍使い、拳闘士、魔法使い。
アジトには様々な人がいた、その全員が少しずつ俺へ知識を与えてくれた、気付けば毎日が戦いだった。
朝起きて鍛える、食べる、鍛える、寝る、そしてまた鍛える。
だが不思議と嫌ではない、むしろ楽しかった、確実に強くなっている実感があったからだ。
夜。
一人でナイの手入れをしながら空を見る、腰には推薦書、先生から渡された大切な一枚、魔兵団への切符、俺はそれを取り出した。
「三ヶ月か……」
呟く、試験は近い。
だが焦りはなかった、推薦書の有効期限は発効から三年ある、もし仮に落ちたとしても挑戦は終わらない、次がある、その次もある、だから。
「絶対に受けたい」
「次の試験も」
「その次の試験も」
「受かるまで」
夢は変わらない、王になる、そのためにまずは魔兵団、俺は静かに立ち上がった。
そして再び木剣を握る、まだまだ立ち止まるつもりはなかった。




