第四十四話 ナイ
討伐団のアジトへ戻ると、すでに依頼達成の知らせが広まっていた。
「おお!帰って来たぞ!」
「生きてたか!」
「おい、ハム、服が血だらけじゃねぇか!」
団員たちの笑い声が響く、ハムは苦笑した。
「死ぬかと思ったぜ……」
「思ったじゃなくて実際危なかったのよ!」
キャリーが呆れながら言う、その様子を見ていた団員たちも笑った。
しばらくして、俺たちはビッグの元へ向かった。
団長室――というより大きな作業場のような部屋だった。
ビッグは椅子に座りながら腕を組む。
「で?」
「依頼は終わったか」
「もちろん!」
キャリーが胸を張る、そして俺たちは今回の依頼について説明した。
ソードガーディアン、ハムの負傷、仲間との連携。
そして――
俺は背負っていた剣を置く
ガシャン。
ビッグは剣に近づく。
「ほう」
そのまま剣を手に取り、何度か眺める。
「魔器か」
ぽつりと呟いた。
「知ってるんですか?」
俺が聞くと、ビッグは頷く。
「ああ」
「この剣は確か……」
「ナイ、といったか」
「ナイ?」
聞いたことのない名前だった、ビッグは剣を撫でる。
「かつてオエリア大戦で使われた剣だ」
部屋が静かになる。
「戦争ってあの……?」
「ああ」
「人類と魔族の大戦争の時の代物だ」
ビッグは淡々と答える。
「もっとも、俺がガキの頃に聞いた話だがな」
それでも十分だった、あの戦争で作られた武器、きっとただの剣ではない。
ビッグは続ける。
「この魔器の特徴は一つ」
「魔力を喰らう」
「え?」
「喰らう?」
「そうだ」
ビッグは笑う。
「所有者の魔力を糧にして力を発揮する、魔器の中でもコイツは常時発動で喰らい続ける」
「魔力を……」
俺はナイを見る、普通の剣にしか見えない。
だが、どこか不思議な存在感がある。
「なるほど」
メンが納得したように頷く、そしてビッグは俺を見る、にやりと笑った。
「だがお前にはピッタリじゃないか」
「俺に?」
「お前は魔法が苦手だ」
「その代わり魔力操作は得意」
「身体強化も使う」
「つまり魔力を直接戦闘へ回す戦士だ」
確かにそうだ、属性魔法は苦手。
だからこそ、俺は魔力そのものを扱う技術を磨いてきた。
ビッグはナイを俺へ投げる、慌てて受け取る。
「使いこなしてみろ」
「魔器だろうが何だろうが」
「結局は使う奴次第だ」
俺は剣を見る、黒い鞘、静かな刀身、不思議と手に馴染む。
まるで最初から俺のためにあったような感覚だった。
「ナイ……」
小さく名前を呟く、するとキャリーが笑った。
「良かったじゃん!」
「初めての旅で仲間もできて」
「伝説の剣まで拾っちゃって」
俺は苦笑する、確かに旅立ったばかりだというのに色々なことが起きていた。
だが、そんな日々も悪くない、そう思えた。
ナイを腰へ差す、新たな相棒の重みを感じながら、俺は静かに拳を握った。




