第三十九話 窮地
赤い瞳が土煙の奥で光る、ソードガーディアンは倒れていなかった。
それどころかほとんど傷を負っていない。
「まずい!」
「防御魔法を!!」
だが一瞬遅かった、ソードガーディアンの剣が振り抜かれる。
あまりにも速い一撃、ハムが咄嗟に防御魔法を展開しようとする。
しかし――
ズバァァン!!
次の瞬間、鮮血が舞った。
「ガハッ!」
ハムの身体が吹き飛び、地面を転がりながら大きく血を流した。
「ハム!」
キャリーが叫ぶ、メンも目を見開く、一瞬。
本当に一瞬だけ、全員の動きが止まった。
その隙をソードガーディアンは見逃さない。
地面を蹴る、そして真っ直ぐメンへ突っ込んだ。
「っ!」
メンは弓を咄嗟に構える、だが間に合わない。
俺は反射的に飛び出した、身体強化、限界まで魔力を流し込む。
「危ない!」
ガギィィィン!!
剣と剣がぶつかる、だが受け切れない、衝撃が腕を突き抜けた、鋭い痛みが刺す。
「ぐっ!」
腕から血が流れた。
「アル!」
キャリーの声、俺は歯を食いしばり、魔視を使う。
ソードガーディアンの魔力、剣、周囲の流れ、見える、分かる、だからこそ分かった。
勝てない、少なくとも今のままでは。
「逃げろ!」
俺は叫んだ。
全員がこちらを見る。
「アル!?」
キャリーが叫び返す。
「何言ってるの!」
「いいから聞け!」
俺はソードガーディアンの剣を受けながら叫ぶ、腕が悲鳴を上げる。
「俺が何とかする!」
「そんな――」
「テリトリーから出れば!」
「コイツは大人しくなる!」
ガーディアンは守護者だ、守るべきものから離れ過ぎることはない。
つまり、逃げ切れば助かる。
「ハムを連れて逃げろ!」
キャリーが唇を噛む、メンも動けずにいた。
だが、その間にもソードガーディアンは止まらない。
「早く行け!!」
俺は叫び、そして再び剣を構えた、目の前には守護者、背後には仲間。
だったら、やることは一つしかない。
たとえ勝てなくても、時間を稼ぐ、仲間が逃げ切るまで俺はここで立ち続ける。
ソードガーディアンの赤い瞳が静かに俺を見据えていた。




