第三十六話 面倒な依頼
広間の空気は思ったより和やかだった。
討伐団というからもっと殺伐としているのかと思ったが、そうでもない。
誰かが酒を飲み、誰かが武器を磨き、誰かが仲間と談笑している様子はまるで大きな家族みたいだった。
「それで、学園を出たばかりなのか?」
ビッグが聞く。
「はい」
「若いな」
「十六です」
「若いな」
「さっきも言いましたよね」
周囲から笑い声が上がり、ビッグも少しだけ笑った。
すると隣のキャリーが小声で話しかけてくる。
「面白いボスでしょ?」
「まあ……」
俺は苦笑した、確かに変わっている、もっと怖い人物を想像していが実際は気さくな団長だった。
魔族だからといって人間を嫌う様子もない、むしろ団員たちから信頼されているように見える。
しばらく雑談した後、ビッグが声の調子を変えた。
「で、本題だ」
広間が少し静かになる、俺も自然と姿勢を正した。
ビッグは腕を組む。
「ここに来てもらった以上、遊ばせるつもりはない」
「はい」
「依頼をこなしてもらう」
当然だ、見ず知らずの旅人を養う理由などない。
「その代わり」
ビッグは指を一本立てる。
「金」
次にもう一本。
「飯」
そして三本目。
「寝床」
「全部こっちで用意する」
団員たちも当然のように頷いていた、どうやらここではそれが普通らしいが、俺にとってはありがたい話だった。
旅は何かと金がかかる。
「ありがとうございます」
「礼は仕事をしてからだ」
ビッグは立ち上がり、そして言う。
「ちょうど面倒な依頼がある」
その言葉にキャリーが嫌そうな顔をする。
「あー……」
「まだ残ってたの、それ」
「知ってるのか?」
「有名だもん」
ビッグは机の上にあった紙を取り上げた、依頼書だろう。
そして俺へ見せる。
「討伐の依頼ですか?」
ビッグは頷く。
「そうだ」
「ある村の近くに一本の剣がある」
「だが誰も抜けない」
俺は首を傾げた。
「なんでですか?」
「行けば分かる」
団長はそう言って笑った、その笑みを見て、なぜだろう。
嫌な予感がした。
そしてそれはキャリーも同じだったらしい。
「うわぁ……」
露骨に顔をしかめているのが見えた、どうやら俺の最初の依頼は、普通の依頼ではなさそうだった。




