第三十五話 団長
洞窟の奥、人々が集まる広間のような場所へ案内された。
焚き火の明かり、並べられた武器、討伐団の拠点らしい空気が漂っている。
すると――。
奥から重い足音が聞こえた。
ドシッ、ドシッ。
思わず音のする方を見る、そして現れたのは、大柄な男だった。
二メートルを軽く超える巨体、太い腕、鋭い目。
その存在感だけで周囲の空気が変わる。
「よう、キャリー、戻ったか」
低く響く声だった。
キャリーは笑顔で手を振った。
「ただいま、ボス!」
そして俺の方を向く。
「紹介するわ、うちの団長、ビッグよ」
俺は少し驚く、この人が討伐団の団長、そして、よく見ると人間ではなかった。
額から伸びる角、人間より少し濃い肌色、魔族特有の特徴。
「魔族……」
思わずそう呟くと、ビッグは鼻で笑った。
「なんだ、魔族を見るのは初めてか?」
「いえ、学園で見たことはあります」
「そうか」
それ以上は気にしていないようだった、ビッグは椅子へ腰掛ける、その動作だけで椅子が悲鳴を上げていた。
「で、そいつは?」
キャリーが答える。
「森で会ったの。面白そうだったから連れてきた」
「雑な理由だな」
「いつものことでしょ?」
周囲から笑い声が上がった、どうやら本当にいつものことらしい。
ビッグはため息を吐き、俺を見る。
「名前は?」
俺は背筋を伸ばした。
「アルです」
「ほう」
「魔法学園を出て旅をしています」
「目的は?」
「魔兵団です」
広間が少し静かになった、ビッグは興味深そうに眉を上げた。
「ほぉ」
「得意魔法は?」
その質問に俺は少し言葉を詰まらせた、またこの話か。
「その……ないです」
「ない?」
「正確には……」
俺は苦笑する。
「全魔法が苦手です」
数秒の沈黙、討伐団の面々が固まる。
「は?」
誰かが声を漏らした。
「全部?」
「全部です」
「そんなことあるのか?」
ざわつきが広がった、しかし、ビッグだけは笑わなかった。
むしろ真剣な顔で俺を見ている。
「続けろ」
俺は頷く。
「魔力操作はできます。身体強化も、魔視も使えます」
「ですが、属性魔法との相性が極端に悪いらしくて」
話し終えた後、広間は静まり返っていた、誰もが珍しいものを見る目をしていた中、ビッグは顎に手を当てた。
「なるほどな」
そして、なぜか少しだけ口元を上げる。
「面白い」
その一言に、キャリーが嬉しそうに笑った。
「でしょ?」
どうやら団長も、俺を変わり者認定したらしい。




