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リバースキング  作者: ちゅんちゅん
第二章 魔兵団試験編

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第三十一話 キャリー

旅に出て数十日、俺はある街の宿屋で朝食を取っていた。


旅人、商人、冒険者、様々な人が行き交う学園とはまるで違う空気だった。


「なあ、聞いたか?」


近くの席で男たちが話している。


「この近くで魔物が出たんだってよ」

「またか?」

「ああ」

「被害は?」

「今のところ怪我人だけだが、何人か襲われてる」


俺は思わず耳を傾けた、人型の魔物は学園でも聞いたことはあるが珍しい存在だ。


「場所はどこですか?」


気付けば席を立っていた、男たちがこちらを見る。


「ん?」


「詳しく教えてください」


男は少し驚いた顔をした。


「お前、討伐に行く気か?」


「はい」


俺は即答した、男たちは顔を見合わせる。


「おいおい」

「やめとけ」

「魔物退治は専門の奴に任せておけ」


それでも俺は引かなかった、男は大きくため息を吐く。


「……街の北だ」

「森の入り口付近」

「だが――」


最後まで聞かず、俺は宿を飛び出した。


「あ、おい!」


背後で声が聞こえる、だが足は止めない、人が襲われているなら放っておけなかった。



街の北、森の入り口。


木々の間を駆け抜ける。


すると――


「ギャアアアア!」


獣とも人ともつかない叫び声が響いた。


俺は反射的に走る、そして開けた場所へ飛び出した。


そこにいたのは――


人型の魔物だった、黒い皮膚、異様に長い腕、赤く濁った瞳。


確かに人に似ている、だが明らかに別の生き物だった。


そして、その魔物の前には、一人の少女が立っていた。


「はぁ……」


呆れたようなため息、青色の長い髪、河のような水色の瞳、俺と同じくらいの年齢、少女は面倒そうに魔物を見つめる。


「だからさぁ」


次の瞬間、手の先に魔法陣が浮かんだ。


「大人しくしてくれない?」

拡散水流(スプレッドウォーター)


大量の水が出現し、魔物へ襲いかかった。


ザァァァァァ!!


人型の魔物が体勢を崩す。


「終わり」

複数(マルチ)水槍(ウォータースピア)


無数の水槍が空中に浮かぶ。


十本。


二十本。


いや、それ以上。


そして、一斉に放たれた。


ズドドドドドドッ!!


水槍は魔物の身体を貫き、人型の魔物は動かなくなった。


討伐完了。


あまりにもあっさりだった。


「……すごい」


思わず声が漏れた、それに反応し、少女が振り返った。


青い瞳と目が合う、数秒の沈黙。


「え?」


少女が首を傾げた。


「なに?」


俺も思わず首を傾げる。


「いや……」


少しだけ言葉に詰まる。


「助けに来たんだけど」


少女は魔物の死体を指差した。


「終わったけど?」


「……」


「……」


気まずい沈黙。


そして。


少女が吹き出した。


「あはは!」

「なにそれ!」


旅に出て初めての魔物討伐、そのつもりだった。


そのはずだった、なのに、気付けば全部終わっていた。


少女はひとしきり笑うと、目元の涙を拭いた。


「面白いね!君!」


そう言って笑う顔は、どこか太陽みたいだった。


こうして――


アル・シンセリティとキャリー・キャンディーは出会ったのだった。

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