第三十二話 仲間
森の中。
人型の魔物の討伐は終わった。
俺は倒れた魔物を見ながら、先ほどの戦闘を思い返していた。
「しかしすごいな……」
思わず呟く。
少女――キャリー・キャンディーが振り返った。
「ん?」
「さっきの魔法」
俺は記憶を辿る。
「最初の水流で体勢を崩して」
「その隙に水槍で急所を狙っただろ」
「しかも途中で魔力出力を変えてた」
「魔物の耐久力を見て威力調整したのか?」
キャリーが固まる。
「え?」
俺は続けた。
「水槍も普通の放出じゃない」
「途中で回転を加えてた」
「だから見た目以上の威力が出てたんだろ?」
「ちょ、ちょっと待って!」
キャリーが慌てて手を振る。
「な、なに?」
「君、詳しすぎない!?」
俺は首を傾げた、そうだろうか、キャリーは少し引いた顔をしている。
「もしかして魔視使ってた?」
「ああ」
「やっぱり!」
キャリーは目を丸くした。
「戦いながらそこまで見てたの?」
「まあ……」
「怖っ!」
即答だった、だがキャリーはすぐに目を輝かせる。
「でもすごい!」
「魔力の流れなんて普通そこまで見れないよ!?」
「君、魔力操作すごくない?」
急に距離が近い、俺は少しだけ後ずさった。
「そうかな」
「そうだよ!」
キャリーは興味津々だった。
そして、ふと思い出したように言う。
「そういえばさ」
「ん?」
「君の得意魔法って何?」
来た、この手の話は苦手だ。
「えっと……」
「火?」
「違う」
「水?」
「違う」
「風?」
「違う」
キャリーは首を傾げる。
「じゃあ何?」
俺は少し言い淀む、言いたくない、でも隠しても仕方ない。
「ない……」
「え?」
「得意魔法」
「ないんだ」
数秒の沈黙、俺は慣れていた、大抵ここで驚かれるか同情される、そして付け加えた。
「というか」
「全部苦手」
キャリーはぽかんとしていた。
やっぱり変な話だよな。
そう思った次の瞬間――
「あはははははは!!」
盛大な笑い声が森に響いた。
俺は思わず眉をひそめる。
「笑うなよ」
「だって!」
キャリーはお腹を抱えていた。
「そんなことある!?」
「あるから困ってるんだ」
「初めて聞いた!」
まだ笑っている、普通なら傷付くところだ。
だけど、不思議と嫌な感じはしなかった、馬鹿にしているわけじゃない、本当に面白がっているだけなのが分かるからだ。
キャリーは目尻に浮かんだ涙を拭う、そして笑顔のまま言った。
「面白いね!」
「君!」
「面白くはないだろ」
「いや面白い!」
即答だった、俺はため息を吐く、変なやつだ。
でも、旅に出て初めてできた同年代の知り合いだった。
キャリーはにっと笑う。
「私、キャリー・キャンディー!」
「キャリーでいいよ!」
俺も苦笑する。
「アル・シンセリティ」
「アルでいい」
「よろしく!」
そう言って差し出された手を見る、少しだけ迷って、俺も手を伸ばした。
「よろしく」
手を握る、その瞬間。
これから長い付き合いになるのだと――
なぜだかそんな気がした。
こうして、旅に出て最初の仲間と出会った。




