第三十話 魔王の物語
夜、俺は家の前に立っていた。
旅支度は終わっている、必要最低限の荷物、ライス先生から渡された推薦書、そして腰には愛用の剣、いよいよだ。
明日ではない、今から俺は旅に出る。
静かな風が吹く、家の中へ入り、一枚の写真を手に取った。
父さんと母さん、幼い頃から見続けてきた写真だ、いつも笑っている二人。
「父さん」
「母さん」
自然と声が漏れる。
「俺、旅に出るよ」
少しだけ笑った、返事が返ってくるわけじゃない、それでも話したかった。
「正直、不安だ」
「世界がどんな場所かも知らないし」
「魔兵団に入れるかも分からない」
本音だった、怖くないと言えば嘘になる、でも、それ以上に前へ進みたかった。
「だけどさ」
「俺、諦めたくないんだ」
「魔兵団になる」
「みんなを守れる人になる」
そして――
小さく息を吸う、これはずっと胸の奥にあった夢、誰かに笑われても、無理だと言われても、変わらなかった夢。
「王になる」
静かな部屋に言葉が響く、父さんと母さんならなんて言うだろう、笑うだろうか、驚くだろうか、それとも応援してくれるだろうか。
分からない、だけど今の俺は胸を張って言える。
「行ってきます」
そう言って写真を置く、振り返り、そして家を出た、夜空には無数の星が輝いていた。
学園、仲間たち、ライス先生、校長先生、過ごした日々、全てを胸に刻む、俺は一歩を踏み出した。
世界へ、未来へ、自分だけの道へ。
これは――
俺が王に。
魔王になるまでの物語だ。
第一章 学園編 完




