第二十八話 自分だけの
「俺にも道があるかもしれない」
そんな希望が胸に生まれていた、だが、ライス先生はそこで釘を刺すように言った。
「でもな」
俺は足を止める、ライス先生は前を向いたまま続けた。
「前にも言った通りだ」
「魔力操作だけで魔兵団は務まらん」
その言葉に胸が少し痛む。
「俺は確かに魔力操作を主軸に戦った」
「だがそれだけじゃない」
「剣も使った」
「知識も使った」
「仲間にも助けられた」
「一人で戦ったわけじゃない」
俺は黙って聞いていた、ライス先生の声はいつになく真剣だった。
「仮にな」
「お前が今のまま魔兵団になれたとする」
「それでも名を馳せることはないだろう」
俺は目を伏せる、厳しい現実だった。
魔兵団になれる可能性はある、だが頂点には届かない、そう言われているのと同じだった。
「じゃあ……」
思わず言葉が漏れる。
「諦めろっていうんですか……」
ライス先生は立ち止まり、ゆっくりと振り返った。
「誰がそんなことを言った?」
「え?」
「俺は一度でも諦めろと言ったか?」
俺は言葉に詰まる、確かに、ライス先生は一度もそんなことを言っていない。
「アル」
その声は穏やかだった。
「世界は広い」
風が吹く、校庭の木々が揺れ、窓の外から葉擦れの音が聞こえた。
「お前が知っていることなんて、その広さに比べればほんの一部だ」
ライス先生は空を見上げる。
「もしかしたら」
「お前も驚くような戦い方があるかもしれん」
「もしかしたら」
「お前みたいな人間のための技術がどこかにあるかもしれん」
「もしかしたら」
「誰も知らない道があるかもしれん」
俺は顔を上げた、ライス先生の瞳は真っ直ぐだった。
「可能性を探せ」
「答えがないなら見つけろ」
「前例がないなら作れ」
その言葉は、どこか父親のようでもあり、師匠のようでもあった。
俺は思わず小さく笑う、この人は本当にずるい。
落ち込みそうになる度に、前を向く理由をくれる。
「はい」
小さく頷く、するとライス先生も頷き返した。
「その顔なら大丈夫だな」
夕日が廊下を赤く染める、俺は窓の外へ視線を向け、自分のだけの道を思い浮かべた。




