第二十七話 目の前にいるだろ
重たい空気のまま、俺とライス先生は学園の廊下を歩いていた。
全魔法が苦手、その事実は簡単には受け入れられない、頭では理解している、でも心が追いつかない。
「……」
俺が黙り込んでいると、ライス先生がふと口を開いた。
「少なくとも」
「魔力操作だけで、とんでもない活躍をした魔兵団を俺は知っている」
俺は思わず顔を上げた。
「本当ですか!?」
ライス先生は頷く。
俺の胸に希望が灯る、魔法が苦手でも、戦えた人がいる、活躍した人がいる、それだけで十分だった。
「そんな人がいるなら!」
思わず身を乗り出す。
「ぜひ会ってみたいです!」
「話を聞いてみたいです!」
「どんな修行をしたのかも!」
ライス先生は怪訝そうな顔をした。
「なんだその反応は」
「だって!」
俺は興奮気味に言う。
「知り合いなんですよね!?」
「知り合い?」
ライス先生は首を傾げた。
「そうです!」
「その魔兵団の人!」
「今どこにいるんですか!?」
数秒の沈黙、そして、ライス先生は親指で自分を指差した。
「目の前にいるだろ」
「…………え?」
俺は固まった、数秒遅れて理解する。
「えぇぇぇぇ!?」
廊下に声が響いた。
「先生なんですか!?」
「そうだが」
「いやいやいや!」
俺は頭を抱えた。
「もっと早く言ってくださいよ!」
「聞かれなかったからな」
「絶対わざとですよね!?」
ライス先生は少し笑う、珍しく楽しそうだった。
俺は大きくため息を吐く、そして苦笑する。
「なんか真面目に落ち込んでたのが馬鹿らしくなってきました……」
「それは良かった」
「なにも良くないですよ……」
「そうか」
相変わらずの調子だ、だけど、さっきまで胸を押し潰していた不安は少し軽くなっていた。
目の前にいる、魔法の才能だけに頼らず戦い抜いた人が。
なら、俺にもまだ道があるのかもしれない。
そんなことを思いながら、俺はライス先生の背中を見つめていた。




