第二十二話 点数
「次」
試験官が名簿を確認する。
そして。
「アル・シンセリティ」
その名前が呼ばれた瞬間、演習場がざわついた。
「あいつか」
「得意魔法なしの」
「ついに来たな」
「今回は何秒で失敗するんだ?」
そんな声が聞こえる、以前なら気になっていたかもしれない、だが今は違った。
俺はゆっくり前へ出る、視線が集まる。
笑う者、見下す者、興味本位の者、色々な目がある、それでも不思議と緊張はなかった。
(大丈夫)
深く息を吸う、吐く。
(集中しろ)
目の前には試験用の人形、魔法の威力や戦闘能力を測定するための特殊な人形だ。
俺は腰の訓練用の剣へ手を添える、ライス先生との修行の日々が脳裏をよぎった。
朝から晩まで続いた身体強化の訓練、何度も振った剣、何度も転んだ日々、全部、この瞬間のためだ。
(全力でいく)
体内の魔力を巡らせる、腕へ、足へ、全身へ、身体強化。
以前とは比べ物にならないほど自然に魔力が流れる。
そして――。
地面を蹴った。
ドンッ!!
一瞬で距離を詰める、周囲の目が見開かれる。
速い、以前の俺ではあり得ない速度だった。
そして剣を振る、ただそれだけ、無駄のない一撃。
ザンッ――!!
静かな音が響く、次の瞬間。
人形がゆっくりとずれた。
上半身と下半身が離れる、完全な両断。
演習場が静まり返った、誰も声を出せない、試験官すら固まっていた。
やがて人形を確認し、得点を告げる。
「……十五点」
満点には遠く届かない、だが以前の俺なら考えられない点数だった。
沈黙、そして。
「え……?」
誰かが呟く。
「今の……」
「人形を斬ったのか?」
「アルが?」
「嘘だろ……」
生徒たちがざわめく、驚きの声が次々と上がる。
俺は静かに剣を収めた、満足はしていない、まだ足りない、でも確かに前へ進めている、そう思えた。
少し離れた場所では、ライス先生が腕を組みながら静かに頷いていた。




