第二十一話 ムウ
技術テストが始まった。
広大な演習場には学年中の生徒たちが集められている。
一人ずつ前へ出て、自らの魔法を披露する形式だ。
炎、水、風、土、次々と魔法が放たれ、歓声が上がる者もいれば落胆する者もいる。
そんな中――。
「次」
試験官が名前を呼ぶ。
「ムウ・エンブレム」
その瞬間、演習場の空気が変わった。
「あいつか」
「来たぞ」
「学年トップ」
ざわめきが広がる、前へ出たのは一人の少年だった。
赤髪、整った顔立ち、燃え盛る火のような紅蓮色の瞳、アルより少し高い身長、自信に満ちた表情。
ムウ、得意魔法は火、この魔法学園の学年首席、そして賢者グロウの子供でもある。
ムウは気負う様子もなく手を前へ向けた。
次の瞬間、巨大な炎が空へと駆け上がる、普通の火ではない、圧倒的な密度、圧倒的な威力、演習場の空気が熱を帯びる、そして。
ゴォォォ!!
轟音と共に炎は人形を跡形もなく消していた。
静寂。
そして――。
「おおおお!!」
歓声が沸き起こった。
「すげぇ!」
「相変わらずだな!」
「レベルが違う!」
試験官も目を見開く、やがて高らかに告げた。
「最高得点!」
歓声がさらに大きくなる、ムウは当然と言わんばかりの顔で肩をすくめた、余裕そのものだった。
「またトップだな」
「やっぱ別格だ」
「さすが賢者様の子供だな」
「もう魔兵団の推薦書を貰ってるんだとよ」
周囲が口々に称賛する、俺もその様子を見ていた。
正直、すごいと思った、悔しいくらいに。
俺には到底真似できない。
だけど――。
「……」
ほんの少しだけ、本当に少しだけだ、前ほど絶望しなかった。
以前の俺なら、あんな魔法を見ただけで諦めていたと思う。
でも今は違う、届かない、それは分かっている。
それでも、いつか追いつきたいと思えた、そんな自分に少しだけ驚いていた。
そして試験はまだ続く、やがて近づいてくる。
俺の番が。




